Columnコラム

「世界」という文言が出てこない
チーム名である「MISTRAL(ミストラル)」は、「台風の目」や「風」を意味するフランス語です。チームミッションは「風を起こす」。今年のチーム目標は、「A1で日本一」と「観客動員数クラブ1位」。
全クラ決勝戦に出場した男女4チームのうち唯一「世界」という文言がどこにも出てこないのがMISTRALでした。
全クラ決勝戦でMISTRALが対戦したNeO(ネオ)のチームスローガンは「ラクロスから世界へ」。
男子決勝戦に出場したKAWASAKI FALCONS(カワサキ ファルコンズ)の2025年度チーム目標は「世界に通用する選手」になることだったし、GRIZZLIES(グリズリーズ)は「世界で勝つための環境を日本で作るという意味で存在している」と主将#11金谷洸希選手が準決勝のインタビューで答えています。
なぜMISTRALには「世界」という文言が出てこないのか。それなのになぜ優勝できたのか。主将の#9井田ほのか選手にお聞きしました。
ラクロスを通じて誰かの心を動かしたい
「いただいたインタビュー項目の中で一番考えたというか、確かにって思ったんですけど、そうですね、個人の主観なので、他のメンバーがどう思っているかは分からないんですけど」。
そう前置きをしたあとで、井田選手はこう答えました。
「自分たちがラクロスをする意味みたいなところを一人一人が考えたときに、ラクロスを通じて誰かの心を動かしたいとか、MISTRALの特徴である全員で戦うという総力戦のなかで、個と個の掛け合わせの化学反応で作るラクロスの面白さを伝えたいとか、そういう思いを持ったメンバーがMISTRALに多くいるからかなと思っています。
ラクロスのおもしろさを伝えたいという過程で、おのおのが『世界』を目指したり、日本代表を目指したりするかもしれないですが、チームとしてはそんなに大々的に掲げているものはないですね」。
チームで勝つために個々人が何をするか
日本代表選手が多くいるチーム(2026年2月2日発表の2026年日本代表選手22名中、NeOから11名、MISTRALから2名が選出)が勝つと単純に思っていましたが、MISTRALがNeOに勝てたというのは、個人技だけではなく、チーム力が勝っていたというところが大きいのでしょうか。
「そうですね。チームで勝ったという感覚がすごく強いですね。いつも戦術・戦略を立てるときはMISTRALとしてどんなラクロスで勝つか、その中で個々人がどんな役割を遂行するのかというところを考えています。チームで勝つ、組織で勝つというのがMISTRALの最大の強みです。今回の決勝戦はとにかくそこを徹底して、チームとして一つの認識、この戦略・戦術でいくよっていうのを明確に持って、それを全員が最大限発揮してやれたっていうのが、大きな勝因かなと思います」。
入部した2022年の景色
全クラ決勝戦後、応援席に挨拶をする主将#9井田ほのか選手
井田選手がMISTRALに入部したのは、同志社大学を卒業してすぐの2022年4月でした。
その2022年はMISTRALが2013年以来8大会ぶりに優勝した年です。社会人1年目だった井田選手にはどのような景色に映ったのでしょうか。
「わたしが入部する2年前のコロナ禍(2020年)に『MISTRAL3か年計画』が立てられたと先輩方からお聞きしました。わたしが入部した2022年はその最終年だったんです」。
3か年計画が立てられた2020年は、それまで主将であった#0鈴木理沙選手から#43田中希実(たなか のぞみ)選手に替わった年で、前年2019年には新星NeO(2014年創部)が全クラで4連覇しているときでした。
「3か年計画が立てられた2020年当時、MISTRALが改めて日本一を取りに行くチームとなるために、徹底的に改革するという計画が立てられました。
技術だけじゃなく、組織の部分から徹底的に意識統一をするというものです。
わたしが入部した2022年だけで言うと、『(3か年計画の最終年である)今年は何が何でも集大成としてNeOを倒して日本一を取るんだ』っていう、もうなんか執念がたぎっているような組織の雰囲気ではありました。
ただ、それで殺伐とするとか、すごく厳しくてシビアな雰囲気とかっていうわけでは一切なく、もう先輩たちも覚悟が決まった状態で、あとは自分たちのラクロスを高めるだけ、という雰囲気でした。
だから、1年目だった私たちに対しては、『1年目の力が今年の優勝には必要だから、各々の個性をとにかく尖らせてほしい。MISTRALのラクロスをしようと思わなくていい。チャレンジして失敗することは私たちがカバーするから、失敗を恐れず、もう全部出し切ってほしい』と、当時の先輩方全員が迎え入れてくださったので、チームの雰囲気もすごく良かったです。そこに今年必ず結果を出すんだっていう執念はぶらさず、すごくいい形で日本一を取れた年だったと思っています」。
優勝の翌年、翌々年の全クラ準優勝
8大会ぶりに優勝した翌年2023年と2024年、MISTRALは全クラ決勝戦でNeOに負けて、再びクラブの頂点から姿を消します(「全クラ・全日の優勝チーム表」参照)。
「8大会ぶりに優勝したあと、当時の主力メンバーであった選手たちが十何人も一気に引退をされました。
2023年は、メンバーが大きく入れ替わってスタートし、自分たちで自分たちにすごくプレッシャーを掛けていました。
2024年も、勝ちたいという気持ちと勝たなきゃっていう期待とプレッシャーが入り混じった感覚でやっていて、MISTRALのラクロスを思う存分にできていなかったし、楽しめてなかったです」。
| 年度 | 回 | 全クラ | 回 | 全日 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1990年度 | — | — | 1 | 東京女子体育大学 | |
| 1991年度 | — | — | 2 | 関西学院大学 | |
| 1992年度 | — | — | 3 | 東京女子体育大学 | |
| 1993年度 | — | — | 4 | 関西学院大学 | |
| 1994年度 | — | — | 5 | 関西学院大学 | MISTRAL創部 |
| 1995年度 | — | — | 6 | 東京女子体育大学 | |
| 1996年度 | — | — | 7 | WISTERIA | |
| 1997年度 | — | — | 8 | WISTERIA | |
| 1998年度 | — | — | 9 | WISTERIA | |
| 1999年度 | 1 | WISTERIA | 10 | WISTERIA | |
| 2000年度 | 2 | MISTRAL | 11 | WISTERIA | |
| 2001年度 | 3 | WISTERIA | 12 | WISTERIA | |
| 2002年度 | 4 | WISTERIA | 13 | WISTERIA | |
| 2003年度 | 5 | Sibylla | 14 | Sibylla | |
| 2004年度 | 6 | MISTRAL | 15 | WISTERIA | |
| 2005年度 | 7 | WISTERIA | 16 | CHEL | |
| 2006年度 | 8 | MISTRAL | 17 | MISTRAL | |
| 2007年度 | 9 | MISTRAL | 18 | MISTRAL | |
| 2008年度 | 10 | FUSION | 19 | FUSION | |
| 2009年度 | 11 | Sibylla | 20 | Sibylla | 大学選手権大会が初開催 |
| 2010年度 | 12 | MISTRAL | 21 | Sibylla | |
| 2011年度 | 13 | FUSION | 22 | NLC SCHERZO | |
| 2012年度 | 14 | MISTRAL | 23 | 慶應義塾大学 | |
| 2013年度 | 15 | MISTRAL | 24 | MISTRAL | |
| 2014年度 | 16 | NLC SCHERZO | 25 | 明治大学 | 12月にNeO創部 |
| 2015年度 | 17 | FUSION | 26 | 明治大学 | NeO 東日本CL初参戦 |
| 2016年度 | 18 | NeO | 27 | 関西学院大学 | |
| 2017年度 | 19 | NeO | 28 | 慶應義塾大学 | |
| 2018年度 | 20 | NeO | 29 | NeO | |
| 2019年度 | 21 | NeO | 30 | NeO | 全日がワンマッチへ |
| 2020年度 | コロナ禍により特別大会 MISTRAL3か年計画スタート | ||||
| 2021年度 | 22 | NeO | 31 | NeO | |
| 2022年度 | 23 | MISTRAL | 32 | MISTRAL | MISTRAL 8大会ぶり8回目の優勝 |
| 2023年度 | 24 | NeO | 33 | NeO | 全日が「A1」へ |
| 2024年度 | 25 | NeO | 34 | NeO | |
| 2025年度 | 26 | MISTRAL | 35 | MISTRAL | MISTRAL 3大会ぶり9回目の優勝 |
全クラ・全日の優勝チーム表
MISTRALが体現したいラクロスとはいったいなんなのか
MISTRALの選手たちは、2025年は更なるプレッシャーを自分たちに与えたと井田選手は言います。
「今ここにいるメンバーで2025年に勝てなかったら、これ以降、ラクロス界にインパクトを与える強いMISTRALを作り上げることはできない」。
2025年のシーズンが始まる前、MISTRAL全員が集まり、「なぜ私たちはラクロスをやるのか、なぜ私たちはその中でもMISTRALでラクロスをやるのか」を考えることにしたのです。
「2020年の3か年計画を立てたとき、MISTRALは『女性アスリートの価値を高める(以下、ジョカチ)』をミッションに置き、それ以降2024年まで、なんとなく『MISTRALってジョカチ』だよねと掲げ続けてきました。
新シーズンが始まる2025年2月に、当時のメンバーはもうほとんど残っていないし、改めて今このチームがMISTRALとして体現したいことってなんだろうということを全員で考えました。
付箋に書き、貼り出して見えてきたものは、『ラクロスをする姿とか努力する姿勢を見て、誰かに影響を与えたい』とか、『少しでも人の心を動かしたい』というものでした。それで決まったミッションが『風を起こす』。
そもそも(1994年に)MISTRALが生まれたのも、ラクロス界に風を起こしたい、ラクロスを通じて世の中に風を起こしたいという思いからだった、というストーリーもあります」。
では、今後もずっと「風を起こす」がミッションであり続けるのでしょうか。
「そこもMISTRALは自由なんです。そのときMISTRALを作っているメンバーが、本当に掲げたいものを掲げることができるんです」。
「先手」が勝利をもたらした
全クラ決勝戦でディフェンスをする#9井田ほのか選手(右)
自分たちがなにをすべきか見出したMISTRALは全クラ決勝戦で、東日本チャンピオンリーグのプレーオフ決勝では5-12で負けたNeOに10-4で勝利します。
「オフェンスもディフェンスも『先手』を取るというのをとにかく意識しました。相手が何かを仕掛けてくるのを待ってから対応するのではなく、すべてMISTRALから先手を取りに行きました。
東日本リーグのプレーオフ決勝でNeOに負けたのは、全部受け身だったからです。受け身では勝てないと分かったので、とにかく『先手オフェンス』『先手ディフェンス』を徹底しました」。
バックオフィスという存在
全クラ決勝戦会場・大井ホッケー競技場メインピッチのMISTRAL応援席
ここからは、MISTRALの応援席をたくさんの人で埋めるミッションを遂行したバックオフィスのお一人、森若菜さんにお話を伺います。
森さんは、2012年にMISTRALに入部し、2019年まで選手を続けたあと、2020年にスタッフに転向しました。
「技術系スタッフをやり始めたんですよ。そこがバックオフィスにつながる一番のポイントになります。
なぜ技術系のスタッフになる必要性を感じたかというと、転向した2020年ごろはまだ、グランド手配から笛吹き、ボトルフォローまで選手が全部やっていたんですね。マネージャーが1人、2人いましたが、日常のグランド手配など幹部がしていました。
本来はチームの技術向上に集中すべき技術幹部がですよ。
わたしは、本当にもったいないなってずっと思っていたんです。
MISTRALには、こんなに優秀な選手たちが揃っているのに、なぜ勝てないんだろう。もし、優秀な選手たちに選手業だけをやらせたら、勝てるんじゃないかと思い始めました。
わたしが選手を引退したのは、選手として限界だったからとはいえ、MISTRALがもっと良くなるように、彼女たちが被っている余計な仕事を全部巻き取ってラクロスに集中してもらおうと思ったからなんです。
2021年度の全クラ決勝戦で、MISTRALはNeOに7-8で負けましたが、なんだかもう勝てそうだなと思ったんで、わたしは2021年にスタッフとしてもMISTRALを辞めました」。
翌2022年、「もう勝てそう」という森さんの感覚は当たり、MISTRALは全クラ決勝戦でNeOに8-7で勝ち、8大会ぶりの優勝を果たし、のちの全日でも優勝しました。
全クラ決勝戦のスタンドを盛り上げる森若菜さん(写真:佐々木美雨さん撮影)
「その年、わたしはMISTRALを引退していたのでチームに何も関わっていなかったんですが、決勝の場面だけは、のぼりや旗を作り、お客さんを誘導し、OGとして応援席を盛り上げようと動きました。
このとき、ああ、今度はこういう動きをする人が必要なんだって思っちゃったんですよ。MISTRALファンとして来てくださった方々を盛り上げないといけないんだ、と」。
いない部分を補おうということで、森さんは、また2023年度からバックオフィスとしてMISTRALに戻りました。
なお、バックオフィスという名前を付けたのは2024年度からです。
「明確に分けてはいないのですが、毎回練習に行く常駐スタッフがいて、練習に行くスタッフとは別に練習には行かない…3、4人くらいいるんですが、その3、4人+常駐でありながらバックオフィス業務を担うスタッフチームを『バックオフィス』と呼んでいます。渉外、スポンサー関係とか、今回の全クラ決勝戦やA1を盛り上げましょうとか、集客を統括する部隊です。バックオフィスと言うとちょっと分かりにくいんですけど、練習現場に行かなくてもできる業務を担っているスタッフといったイメージですかね」。
2013年に全クラ・全日で優勝したあと
なぜMISTRALが1994年創部からいままでチームが存続し、そしてなぜいまも強いのか。
2012年に入部してから13年間、MISTRALの「中」にいる森若菜さんなら、なにか答えを知っているかもしれないと思いお聞きしました。
「強くあるためには、直近だけで考えると、A1に出場するスタメン級の選手が、翌年に半分以上チームに残ることが必要だと思います」。
森さんがそう言うのは、自身の経験からでした。
「我々が入部したのは2012年で、翌2013年にMISTRALが全クラと全日で優勝したのですが、その翌年、スタメンが全員辞めてしまったんです。本当に全員辞めました。
(日本代表選手を経験した)和田亜紀子さんや松井理紗さんといった方々がMISTRALで長く活躍されていたんですけれど。
それで、残されたのが私たち10人のちっぽけな同期たちでした。これでMISTRALは崩れ始めたと思ってます。
我々だけの運営では、何のノウハウもない、技術もない、ラクロスの軸もはっきりしてない、みたいなところで、厳しい状態がずっと続いていたんです」。
その状況のなかでも希望が見え始めたのが、2年後の2016年でした。
現在もMISTRALで活躍をする#0鈴木(当時、松本)理沙選手を始め、2014年と2015年に全日で優勝した明治大学の卒業生や当時活躍していた選手がMISTRALに入ってきたのです。
ディフェンスをする#0鈴木理沙選手(左)
翌々年の2018年には、2017年に全日で優勝した慶應義塾大学のメンバーも入ってきます。
「希望が見え始めたんですよ。ここから変わるぞ、やっとパズルのピースが揃った、と」。
ところが、こんなにもメンツが揃ったというのに、MISTRALは勝てませんでした。
「NeOの台頭もありますが、FUSION(フュージョン)にも負けたりしていたんで、MISTRAL自体が急にいろんな種類の人が入ってきたんで、方向性がバラバラで、コントロールが効かなくなっていたんです。2017年から2019年まではガタガタして危ういチームでした。いいプレイヤーが揃っているにも関わらず、それを活かせないチームでした」。
辞める選択肢はなかった、と森さんは言います。
「私、そんなに器用ではないので、この状況をどうしたらいいのかなと思いながら過ごしていました。このタイミングでもう30歳くらいだったんで、辞めてもよかったんですけどね。だけど、愛着なのか、辞める選択肢がなかったんですよね。こんなにいいプレイヤーが集まっているんだから、変えていこうよっていう方に気持ちが走りました」。
3か年計画の元年のこと
#43田中希実選手
2020年に森さんは選手から技術スタッフとなったのですが、同時に#43田中希実選手が主将となりチームの大改革が始まる年でもありました。
「当時はコロナ禍だったんで、ラクロスができずに、チームのみんなで会話する時間がたくさんあったんです。
自分たちはどういう組織なんだっけ、何のバリューを出せるんだっけ、どんなラクロスをしたいんだっけ、そのためには何を極めて、どんな行動をしていけばいいんだっけ、と話し合い続けました。かなりぶつかり合いましたし、このタイミングでチームを去った人も多いです。
田中希実選手率いる主将チームが組織の観点で会話をして、#8鴨谷真凛選手や#16井上果歩選手率いる幹部が技術の話を詰めていきました。
敷浪一哉(しきなみ かずや)さんは、その時に来てくださったヘッドコーチです。
ラクロスの技術を詰める敷浪ヘッドコーチの存在は非常にありがたかったです」。
2022年優勝時のメンバーが半分以上残った
#16井上果歩選手(左)
3年後の2022年、MISTRALは8大会ぶり8回目の全クラ優勝を果たします(全日では8大会ぶり2回目の優勝)。
「優勝を機にスタメンが半分以上辞めるのですが、主力だった#0鈴木理沙選手、#8鴨谷真凛選手、#12櫻井美帆選手、#16井上果歩選手、#43田中希実選手、#70杉浦理恵子選手、#95岩田菜央美選手、そして選手を下支えする強力なスタッフ陣がチームに残りました。このことが、今回の勝ちに繋がったと思っています。
現主将の#9井田ほのか選手も組織幹部、技術幹部、チームのみんなも相当頑張りました。恐れることなく貪欲にチームと自分自身に向き合い続けたからこその結果だと思います。ただ、前提として、前回優勝時の7人の選手が残っているっていうのは大きかったと思っています。この7人がいなかったら、どれだけ井田ほのか選手率いるメンバーが優秀だったとしても、優勝は多分難しかったと思います」。
MISTRALを次世代に繋いでいく人
前回の優勝時に在籍していた主力選手が半分以上残っていること。
勝つために必要だったこの条件ですが、では、低迷期からの脱却には何が必要だったのでしょうか。文化を伝える誰かが必要だったのではないか、そして、その役割を担ったのが森若菜さんだったのではないかと思えてなりません。
「それはないです。私の今の関わりは、お伝えしている通りバックオフィスのみなので、私がチームに対してブレないようなアプローチは全くしていません。そこにわたしが貢献しているなんてメンバーも思っていないです。
MISTRALは、(誰か特定の人が繋ぐのではなく)軸のバトンを繋いでいっているんだと思うんですよ。
私たちは、チームワークや成長をすごく大事にしているチームです。これはMISTRALのずっと続く文化だと思うんです」。
MISTRALの文化は1期からちゃんと受け継がれている
森さんは分かりやすいようにと、NeOとMISTRALとの比較で説明してくれました。
「NeOは個人のパフォーマンスが相当強いので、個人・個人・個人と繋がったときに素晴らしいラクロスを見せてくれるチームです。
対するMISTRALは、個人では負けてしまうかもしれませんが、チームになった時のラクロスは止められないものがあり、魅力的なものがある。わたしたちはそれをずっと大事にしてきた。
新勧でも連携を大事にしているチームだと伝えていますし、なによりも成長を大事にしようと伝えています。
前の幹部で現在も残っている選手は下の子を育成しようという観点をすごく持っていて、そうやってバトンを繋いでいるんだと思うんです。
なぜバトンを繋ぐ組織になってきたかというと、1期生の存在が大きいんですよ。
1期の先輩とは、いまもずっと繋がっているんです。今回のA1にも10人以上も1期の先輩方が来てくださいました」。
MISTRALの強さはここにあるんだと思えました。
創部した年のOGが試合を見に来るチームは、決して消えたりしません。それだけ大事にされているチームは今後もずっと残っていきます。
「創部した1994年は、世界ラクロスとWISTERIA(ウィスタリア)の2強で、大学を卒業後、ラクロスを続ける人はどちらかに入部していたそうです。
1期のしのさんという方が、『2強じゃつまらない、新しい風を起こしちゃおうぜ』とMISTRALを立ち上げました。しかも、短期大学を卒業して同期が卒業するのを2年待ってチームを作ったと言います。いろんな大学から入部希望があったということで、当時からバリエーションが豊富だったんです。だから、チームワークを大事にしているんですよ。仲間が大事という1期の方が作った文化がいまも続いているんです。
新勧をするときには『チームワーク』と言います。個人で成長したい人はNeOがあるよと言います。だから、MISTRALに残っていく人たちは同じ感性を持って、同じ文化を大事にする人たちなんです。合わない人はやめていくけれど、それでいいと思っています。だから、繋がっていくのかなと思っています」。
観客動員数クラブ1位
全クラ決勝戦の会場であった大井ホッケー競技場メインピッチ(東京都品川区)のスタンド、MISTRALの応援席は多くの観客で埋め尽くされていました。
MISTRALの目標のひとつである「観客動員数クラブ1位」は全クラ決勝戦800名動員で、クラブ1位は達成されたも同然でした。
「MISTRALが目指す勝利は、たくさんの人を巻き込んで、たくさんの方に一緒になって戦って応援いただいて、一緒に勝つのがMISTRALだよね」。
これは、主将#9井田ほのか選手が、森さんの言葉として紹介してくれたものです。
「2023年と2024年とNeOに負けた全クラ決勝戦は、そこを忘れて、勝たなきゃ、勝たなきゃっていうところだけに囚われていました。
全クラ決勝戦で、コートにいて一番体感したのは、MISTRAL側の観客席の一体感。
本当に一緒に戦っている感覚がありました。
もうめちゃくちゃ力になりました。歓声がすごく聞こえますし、もうずっと試合を通して一緒に登り続けられる感覚がすごくありましたね。一緒に戦ってくれている人がこんなにいるんだっていう。本当に背中側が完全に守られている感じがありました。これだけ応援してくださっている中で、勝てないわけがないぐらいの感覚でした」(#9井田選手)。
MISTRALは、このあと2026年2月1日に開催された「日清食品 presents 第35回ラクロス全日本選手権大会 A1」でも学生王者の関西学院大学に6-2で勝利し、3大会ぶり5回目の日本一となりました。
「日本一になる」チームは、「日本一になる」以上の何か大きくて包括的な目標を持っているという共通点を感じました。
MISTRALのミッションや目標に「世界」という言葉は出てきませんでしたが、名前の通り、自分たちのチーム力と多くの人を巻き込むことで「日本のラクロス」に新しい風を起こしました。その風をまた、バトンに乗せて次の世代へと繋いでいくのです。
【プロフィール】
名前:井田 ほのか(いだ ほのか)
背番号:9 MF 主将
出身大学:2022年3月 同志社大学卒業
クラブチーム選手歴:
2022年~現在 MISTRAL
日本代表歴:
2019年 19歳以下女子日本代表/ WORLD LACROSSE 女子19歳以下ラクロス世界選手権大会
2022年 SIXES女子日本代表/THE WORLD GAMES 2022
名前:森 若菜(もり わかな)
役職:バックオフィス スタッフ(2020年~現在)
出身大学:2012年3月 東海大学卒業
クラブチーム選手歴:
2012年~2019年 MISTRAL
Photo by 日本ラクロス協会広報部 海藤秀満・小保方智行
Text by 日本ラクロス協会広報部 岡村由紀子












