Columnコラム

ついにあと1週間に迫った日清食品presents第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会。6月から長いシーズンを戦い抜き、勝ち残ってきた男女4チームが、己のプライドを一心に賭け戦います。
男女ともに多数の日本代表経験者を抱え、名実ともに日本最高峰の試合になるであろうこの決勝戦。
一体どんなドラマが待ち受けているのでしょうか。
今回は決勝戦に先立って、これまでのクラブシーンのハイライト、そして決勝戦の見所をお伝えしていきたいと思います。
新たな黄金時代の幕開けか、因縁の対決
FALCONSというチーム
2024年12月14日。FALCONSにとっては忘れられない日になったであろう。
スコア10-2での大敗。誰がこの大敗を予見していただろうか。戦っていた選手たちが一番それを感じていただろう。
全日本選手権大会12連覇、クラブ選手権大会9連覇。日本のクラブラクロスシーンを語るにあたって「FALCONS」という存在は外すことができない存在である。
数々の日本代表選手を輩出し、名実ともに日本のラクロスをリードしてきたFALCONSが近年、2年連続でその座を逃している。
新星〜GRIZZLIESの誕生〜
2021年、東日本クラブリーグに新たなチームが誕生した。その名も「GRIZZLIES」。
当時日本代表選手として日本ラクロスをリードしてきた、金山暖選手(東京大学出身)や、金谷洸希選手(千葉大学出身)を筆頭としたチームである。
「日本ラクロスを牽引する」というコンセプトとともに生まれたGRIZZLIESは、近年のラクロスの象徴として、その存在感を放っていく。
2023年、創部3年目にして初の全日本クラブ選手権大会優勝、翌年2024年も優勝を飾り連覇を成し遂げ、その両年でその後のA1も制している。
今シーズンもその強さは健在で、東日本クラブリーグ戦では8勝1敗1分で優勝、リーグ1位でクラブ選手権大会への切符を手にしている。(FALCONSは7勝1敗2分で2位)
準決勝で見せた両チームの力
KAWASAKI FALCONS 13-0 OPEC VORTEX
11月23日、東京会場で行われた準決勝。FALCONSは東海クラブ1位のOPEC VORTEXを相手に圧倒的な力を見せつけた。
前半こそ4-0と、OPEC VORTEXの鋭いディフェンスに苦しめられたものの、後半は怒涛の攻撃で9得点を奪い、最終スコア13-0の完封勝利。
MF #17 黒田健志郎選手のコメント
「フェイスオフはずっととってくれていたので、そこがオフェンス自身もプレッシャーに感じすぎずにできていました。今日の点差の要因だと思います」
驚異的だったのはフェイスオフの勝率。こぼれ球を含めて9割超という圧倒的な数字を記録し、試合を支配し続けた。
さらに黒田選手は続ける。「チームがシーズン当初に掲げたのは、世界に通用する選手を生み出す、世界で活躍する選手を生み出すということです。そこをぶれずに最後の3週間やっていく」
AT#14吉田健生選手の切り込み、MF#13石村嶺選手のゴールなど、多彩な攻撃パターンを見せたFALCONS。2026年1月のアジア・パシフィック選手権大会に出場する日本代表選手が多数在籍する層の厚さが、この圧勝を生み出した。
GRIZZLIES 10-2 ACL
一方のGRIZZLIESは11月29日、大阪・ヤンマーフィールド長居で関西クラブ1位のACLと対戦。10-2で勝利し、3年連続の決勝進出を決めた。
試合開始早々、FO担当の#70宮田友博選手が自らボールをスクープしてゴールへ向かい、そのままマンアップの流れを作ると、開始1分で#0尾花一輝選手が先制点。1Qだけで4得点を奪い、圧倒的なペースで試合を進めた。
注目は3Q。ACLがテンマンライド(ゴーリーも含めた10人でのライド)とゾーンディフェンスに切り替えたことで、GRIZZLIESの攻撃リズムが乱され、このクオーターは無得点に抑えられた。
主将 #11 金谷洸希選手のコメント
「3Qで、ACLのライドがテンマンライドを仕掛けてきたので、GRIZZLIESのクリアの成功率が下がってしまったというのが一つあります。もう一点、ACLがマンツーマンディフェンスからゾーンディフェンスへ変えてきたことで、ペースが乱されたということがあります」
しかし4Q残り2分、フルフィールドクリアからACLの守備が崩れた局面で、#56小峰拓真選手、#64種村魁選手が立て続けに得点。わずか18秒間で2得点を奪い、最終的に10-2で勝利を収めた。
準決勝の結果、東日本クラブの1位と2位が決勝で激突という、まさに日本最高峰の戦いが実現することとなった。
勝利のカギを握るのは
3年連続で同一カードとなる本試合。まずは2年分の試合スタッツを見返していきたいと思う。
2023年決勝戦
| 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| FALCONS | 1 | 0 | 2 | 1 | 4 |
| GRIZZLIES | 2 | 2 | 1 | 1 | 6 |
得点者
FALCONS
#1 大庭成浩/#9 立石真也/#45 小山大輔/#99 梅原寛樹
GRIZZLIES
#10 小松 勇斗 2得点/#11 金谷 洸希/#21 後藤 功輝/#91 乘田 英樹 2得点
2024年決勝戦
| 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| GRIZZLIES | 3 | 1 | 3 | 3 | 10 |
| FALCONS | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 |
得点者
GRIZZLIES
#5 小野沢 憲太 1得点/#10 小松 勇斗 1得点/#11 金谷 洸希 2得点/#18 辻野 克巳 1得点/#43 平塚 弘喜 1得点/#64 種村 魁 1得点/#91 乗田 英樹 3得点
FALCONS
#3 立石 真也 1得点/#22 鈴木 潤一 1得点
2022年にGRIZZLIESが1部に昇格して以降の対戦成績は、GRIZZLIESが6勝、FALCONSが3勝、引き分けが1戦
アーカイブ映像はこちら(2023年大会) /アーカイブ映像はこちら(2024年大会)
両試合ともに、前半にモメンタムを作ったGRIZZLIESが逃げ切る形で勝利を飾っている。
特に2024年は、ゴーリーの大嶋省吾選手の加入により盤石となったGRIZZLIESのDF陣が輝き、10-2と大差をつけて勝利を収める結果となった。
決勝の鍵を握る3つのポイント
①フェイスオフ(FO)の攻防
準決勝でFALCONSが見せたFO勝率9割超という圧倒的な数字。ラクロスにおいてFOを制することは試合の主導権を握ることに直結する。
過去2年の決勝戦でも、GRIZZLIESは前半でモメンタムを作り、そのまま逃げ切るパターンで勝利してきた。立ち上がりのFO、そして1Q、2Qでどちらがボールポゼッションを握るかが試合の行方を大きく左右するだろう。
②DF陣の完成度
GRIZZLIESは、OFメンバーもさることながら、そのDFメンバーこそが注目である。
ロングスティックのメンバーは、2023年男子日本代表の金山暖選手、廣津泰雅選手、平塚弘喜選手、辻野克巳選手、そして2026年1月にアジアパシフィック選手権大会に出場予定の2025年男子日本代表に選出されている松本友祐選手を擁する盤石の形となっており、ゴーリーも大嶋選手が待ち構える。
対するFALCONSも日本代表経験者が数多く在籍していて、2023年男子日本代表の佐野清選手、袖山朋弥選手、佐藤大選手を中心に、過去複数度日本代表経験をしているベテラン、畠山選手、水田選手、2025年男子日本代表に選出している、小川健選手、佐川仁選手を擁する布陣となっている。
近年の日本代表のDFメンバーのそのほとんどが、FALCONSもしくはGRIZZLIESから選出されている構成になっていて、日本最高峰のDF同士の対決となる。
現在のGRIZZLIESの主要なDFは元FALCONSの選手であり、その選手が流出した結果近年若返りを余儀なくされてきたFALCONSのDFが、どこまでチームとしての完成度を高めることができているかが注目ポイントとなる。
GRIZZLIESはDS(強化指定選手)時代から長年磨き上げてきた連携力を活かした完成度の高いDFを誇っている。
相対的に若さのあるFALCONSのDFがGRIZZLIESのDFを打ち破ることができるかが注目である。
③オフェンスの決定力と戦術適応力
準決勝でFALCONSの黒田選手は「1Q、2Qともにいいオフェンスが出来ていたが、ただ決定力が良くない部分があった」と語っていた。
過去2年の決勝でも、両チームともシュート機会は作れているものの、ゴール前での決定力の差が勝敗を分けてきた。
AT#14吉田健生選手の切り込み、MF#13石村嶺選手の得点力、そして若手の台頭。FALCONSがどれだけ決定機をゴールに結びつけられるか。
対するGRIZZLIESは金谷洸希選手、乗田英樹選手を中心とした多彩な攻撃陣が控える。前半で一気に突き放すいつものパターンを再現できるか。
さらに注目すべきは、GRIZZLIESの戦術適応力だ。準決勝の3Qでは、ACLのテンマンライドとゾーンディフェンスに対応できず無得点に抑えられたものの、4Qではフルフィールドクリアを駆使して一気に3得点。相手の戦術変化に対応し、自分たちの強みを活かす柔軟性を見せた。
FALCONSが準決勝で見せた完成度の高いOFと、GRIZZLIESの戦術適応力。どちらが決勝の舞台で輝くのか。
新世代の台頭
2023年、アメリカ・サンディエゴで行われた男子世界選手権大会に出場したメンバー23人のうち、21人がGRIZZLIES、KAWASAKI FALCONSに所属している現在ではあるが、今大会においてはそのメンバーはさることながら、その影に隠れていた、また、今年新たに両チームの門を叩いた若き新鋭等の活躍が特に注目であると考える。
中でも、2025年男子日本代表に選ばれている、小峰拓真選手、守田樹選手、小山大輔選手といった存在がどれだけチームを引っ張れるかがポイントである。
準決勝でも若手選手の活躍が光った。FALCONSでは黒田選手が「若手も躍動した収穫もあった」と語るように、世界に通用する選手を生み出すという目標に向けて、新世代がどこまで力を発揮できるかが注目である。
GRIZZLIESでは、準決勝で#56小峰拓真選手が3得点、#64種村魁選手も3得点とハットトリックを達成。#0尾花一輝選手も2得点を記録し、ベテランと若手が融合した攻撃力を見せつけた。
決勝では、#11金谷洸希選手、#91乗田英樹選手といった経験豊富な選手たちと、#56小峰選手をはじめとする若手がどのような化学反応を起こすのか。「継続的に日本一になる」というGRIZZLIESの目標は、世代を超えた連携によって実現されようとしている。
日本ラクロスの現在地、そして世界へ
この試合はただの全国大会の決勝戦に止まるものではない。
2026年1月のアジア・パシフィック選手権大会、2027年に日本で行われる男子世界選手権大会、そして2028年ロサンゼルスオリンピックへと続くラクロスムーブメント。その中心を担う選手たちが、この決勝戦で火花を散らす。
準決勝で黒田選手が語った「世界に通用する選手を生み出す」という言葉。FALCONSもGRIZZLIESも、そしてNeOもMISTRALも、世界を見据えた戦いを続けている。
歴戦のベテラン、若き新鋭、そして今もっとも輝き続ける日本のトップ選手たちが繰り広げる戦いからはきっと目を離すことができないであろう。
大会情報
🏟️ 会場情報
会場:大井ホッケー競技場メインピッチ
住所:〒140-0003 東京都品川区八潮4丁目1-19
日時:2025年12月13日(土)
- 男子決勝:11:00 フェイスオフ
- 女子決勝:14:00 ドロー
🏆 対戦カード
【男子】
GRIZZLIES(東日本1位) vs KAWASAKI FALCONS(東日本2位・ワイルドカード)
【女子】
NeO(東日本1位) vs MISTRAL(東日本2位・ワイルドカード)
📺 無料ライブ配信
テレビ東京スポーツYouTubeチャンネル「テレスポ」にて無料配信!
実況はテレビ東京アナウンサー、ゲストに照英さん、まるぴさんをお迎えしての豪華配信となります。
🚃 アクセス
- 🚝 東京モノレール「大井競馬場前駅」より徒歩約8分
- 🚃 京急本線「立会川駅」より徒歩約20分
⚠️ 競技場専用駐車場はありません。公共交通機関をご利用ください。
📍 大井ホッケー競技場の魅力
大井ホッケー競技場は、東京湾に程近い品川区八潮エリアに位置する、人工芝のフルサイズピッチを擁する競技場です。
観客席とピッチの距離が近く、選手たちの声、スティックワークの音、そしてボールが空を切る音までもが間近で体感できるのが最大の魅力。配信では伝わらない、現地ならではの迫力と臨場感を存分に味わえます。
準決勝でも「観客席から近くで声援もたくさん聞こえていて力になりました」(OPEC VORTEX #13山城主将)、「いいプレーしたらすごい歓声が聞こえるし、ドローの時も周りの声援はすごく聞こえるので、力になりました」(MISTRAL #88大野選手)と、選手たちも観客の熱い声援が力になったと口を揃えます。
また、男女の決勝戦を1日で連続観戦できるのも本大会の醍醐味。午前中の男子決勝で日本最高峰のパワーラクロスを堪能し、午後の女子決勝では技術とスピードが融合した美しいゲームを楽しめる、まさにラクロス尽くしの一日となります。
冬の澄んだ空気の中、日本ラクロスの「今」を体感しに、ぜひ足をお運びください。
2025年12月13日、大井ホッケー競技場メインピッチ。
日本ラクロスの現在地は、ここにある。
photo by 日本ラクロス協会広報部
text by ラクロスマガジンジャパン編集部














