Columnコラム

ついに明日に迫った日清食品presents第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会。6月から長いシーズンを戦い抜き、勝ち残ってきた男女4チームが、己のプライドを一心に賭け戦います。
男女ともに多数の日本代表経験者を抱え、名実ともに日本最高峰の試合になるであろうこの決勝戦。
一体どんなドラマが待ち受けているのでしょうか。
今回は決勝戦に先立って、これまでのクラブシーンのハイライト、そして決勝戦の見所をお伝えしていきたいと思います。
女王の時代か、挑戦者の下克上か
NeOというチーム
近年の女子ラクロス界を牽引してきた絶対王者NeO。ここ6大会で5度の日本一を誇り、2024年の東日本クラブリーグ戦では他を寄せ付けない圧倒的な強さで優勝。2024年12月に行われた全日本クラブ選手権大会決勝戦においても、東日本クラブ2位のMISTRALを13-6で下し、盤石な形でクラブ日本一に輝いた。
「ラクロスから世界へ」。そんなスローガンを掲げ、世界基準のラクロスを追求し続けるNeO。多数の日本代表選手を抱え、日本女子ラクロスの先頭に立って道を切り開いてきた存在である。
女子ラクロス戦国時代の終焉
しかし、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。
男子ラクロスでFALCONSが猛威を振るっていた2010年代、女子ラクロスは強豪ひしめく戦国時代に突入していた。2010年代の全日本選手権大会の勝者を見ると、大学5回(明治大学2回、慶應義塾大学2回、関西学院大学)、クラブ5回(NeO2回、MISTRAL、NLC SCHERZO、Sibylla)。男子ラクロスと比べ、大学とクラブの勢力がほぼ互角という時代だった。
そんな混戦の時代を経て、2020年代に入るとNeOが頭ひとつ抜ける存在へと成長。日本女子ラクロスは新たな時代を迎えることとなる。
挑戦者MISTRAL
そのNeOに挑み続けるのが、東日本クラブ2位のMISTRALである。
過去2年連続でNeOに決勝で敗れているMISTRAL。2023年は12-9、2024年は13-6と、特に昨年は大差での敗戦を喫した。
しかし、MISTRALもまた、全日本選手権大会優勝の実績を持つ強豪クラブ。「次こそは」という気持ちで今シーズンをスタートし、5年連続で決勝の舞台に立ち続けている。
東日本クラブリーグ戦プレーオフではFUSIONを11-3で破り、2位として全日本クラブ選手権大会への切符を手にした。
準決勝で見せた両チームの力
NeO 11-5 NLC SCHERZO
11月29日、大阪・ヤンマーフィールド長居で行われた準決勝。NeOは関西クラブ1位のNLC SCHERZOと対戦し、11-5で勝利。5年連続の決勝進出を決めた。
しかし、この試合は決して楽なものではなかった。
前半は2-2、2-2と同点で推移。NLC SCHERZOの若手エース#17平井花林選手の活躍や、ベテラン#34藤原万里子選手と#14松田阿布羅選手の新旧エースコンビネーションが光り、NeOは自分たちのペースでプレーできない展開が続いた。
NeO主将 #56 古井采那選手のコメント
「前半は様子を見てしまって相手のペースに飲まれている部分がありました。後半は、戸惑うことなくボールと人が動き続けられるよう修正しました」
転機は後半。攻め続けることを徹底したNeOが、3Qで4得点、4Qで3得点と怒涛の攻撃を見せた。特に3Q途中から「ぽんぽんぽんとブレイクが続くシーン」が生まれ、一気に流れを引き寄せた。
ディフェンス面でも修正が効いた。「前半は一人ひとりで守っていたとき、せっかくグラウンドボールになっても、拾う時にファールを取られてまた相手ボールになることが多かった」と古井主将。後半は2枚で寄せてノーファールでグラウンドボールを取り切る戦術に切り替え、相手の攻撃を封じ込めた。
得点者は#3山根萌奈選手2得点、#6多賀麻文選手2得点、#8細田すず乃選手2得点、#21ジョーンズ萌仁香選手2得点、#24小林千沙選手2得点、#5河合寧々選手1得点と、多彩な攻撃陣が躍動した。
MISTRAL 17-5 FUSION
一方のMISTRALは11月23日、東京会場で東日本クラブ3位のFUSIONと対戦。17-5で圧勝し、5年連続の決勝進出を果たした。
試合は立ち上がりからMISTRALペース。1Qだけで6得点を奪う猛攻を見せた。AT#66冨森美帆選手の仕掛けを起点にフィールドを広く使った展開から、AT#52藤村麻伊選手が先制点。その後も次々と得点を重ねた。
MF #88 大野以千子選手のコメント
「大差で勝つということを目標にやってきた。ドローはすごくこだわっていた。ドローに関わる人たちで、たくさん練習もしてきたので、こうやって獲得率が高くて良かった」
注目すべきはドローの勝率。特に1Qではこぼれ球を含めて100%という驚異的な数字を記録。試合の主導権を完全に握った。
FUSIONも各クオーターで得点を積み重ね、MF#1春木理沙選手とAT#10下村実緒選手を中心に粘り強く戦ったが、MISTRALの層の厚さと組織力の前に力及ばず。最終スコア17-5でMISTRALが圧勝した。
準決勝の結果、東日本クラブの1位と2位が決勝で激突という、日本女子ラクロス最高峰の戦いが実現することとなった。
勝利のカギを握るのは
3年連続で同一カードとなる本試合。まずは過去2年の試合スタッツを振り返っていきたい。
2023年決勝戦
| 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| NeO | 2 | 3 | 5 | 2 | 12 |
| MISTRAL | 3 | 1 | 1 | 4 | 9 |
2024年決勝戦
| 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| NeO | 5 | 3 | 3 | 2 | 13 |
| MISTRAL | 0 | 1 | 2 | 3 | 6 |
2024年シーズン対戦成績
| 大会 | 会場 | スコア |
|---|---|---|
| 東日本クラブリーグ戦 | 大井ホッケー競技場サブピッチ | NeO 11-5 MISTRAL |
| プレーオフ決勝 | 駒沢オリンピック公園第一球技場 | NeO 12-5 MISTRAL |
今シーズン、NeOとMISTRALは既に2度対戦しており、いずれもNeOが勝利している
過去2年の決勝戦を見ると、2023年は3Qでの5得点、2024年は1Qでの5得点と、NeOがどこかのクオーターで爆発的な得点を記録し、試合の主導権を握るパターンが見られる。
特に2024年は、立ち上がりでMISTRALを完全に抑え込み、1Q終了時点で5-0と大きくリード。そのまま逃げ切る形で勝利を収めた。
決勝の鍵を握る3つのポイント
①ドローの攻防
準決勝でMISTRALが見せたドロー勝率100%(1Q)という圧倒的な数字。女子ラクロスにおいてドローを制することは、男子のフェイスオフ同様、試合の主導権を握ることに直結する。
過去2年の決勝でも、NeOは立ち上がりでドローを支配し、特に2024年は1Qで5得点という猛攻につなげた。立ち上がりのドロー、そして1Q、2Qでどちらがボールポゼッションを握るかが試合の行方を大きく左右するだろう。
NeOは#24小林千沙選手、#9庄島未祐選手ら複数のドロワーを擁し、相手に合わせて使い分ける戦術的な柔軟性を持つ。対するMISTRALは#88大野選手が語るように「ドローはすごくこだわって」準備してきた。このドロー争いが決勝の最初の山場となる。
②攻め続ける力 vs 立ち上がりの勢い
NeOの強さの本質は、準決勝で古井主将が語った「攻め続けること」にある。前半で様子を見て相手ペースに飲まれても、後半で「戸惑うことなくボールと人が動き続ける」修正力。この継続的な攻撃力が、世界基準のラクロスを標榜するNeOの真骨頂だ。
対するMISTRALは、準決勝で「大差で勝つ」という目標を1Qから体現。立ち上がりから一気に畳み掛ける破壊力を見せた。大野選手が語るように「2年連続でNeOに敗れ、次こそはという気持ちでシーズンインからやってきている」チームの執念が、どこまでNeOの完成度に食い込めるか。
しかし、今シーズンの2試合を見ると、NeOはMISTRALの立ち上がりを封じ込めることに成功している。リーグ戦では11-5、プレーオフ決勝では12-5と、いずれも安定した勝利を収めた。
MISTRALが今シーズン3度目の対戦で、ついにNeOの立ち上がりを崩せるのか。それとも、NeOが再び盤石の守りでMISTRALの勢いを封じ込めるのか。
③戦術適応力とディフェンスの質
NeOの強さは、オフェンスだけではない。準決勝で見せたディフェンスの修正力も見逃せない。
「前半は一人ひとりで守っていた」状態から、後半は「2枚人数をかけてノーファールでグラウンドボールを取り切る」戦術へ。この柔軟な対応力が、NLC SCHERZOの勢いを封じ込めた。
さらに、古井主将が明かした「西日」への対応も興味深い。3Qでは西日によるキャッチミスが頻発したが、4Qには「まぶしいのでパスを出さないで」というジェスチャーでコミュニケーションを修正。環境変化にも即座に適応する姿勢が光った。
対するMISTRALは、AT#66冨森選手の仕掛けを起点にフィールドを広く使う展開力が武器。準決勝では17得点という爆発力を見せた攻撃陣が、NeOのディフェンスシステムに対し、どのような攻撃パターンを用意してくるのか。
NeOの適応力と、MISTRALの多彩な攻撃パターン。この戦術的な駆け引きも見逃せない。
今シーズン3度目の対決
NeOとMISTRALは、今シーズン既に2度対戦している。東日本クラブリーグ戦で11-5、プレーオフ決勝で12-5と、いずれもNeOが勝利しているが、古井主将は油断していない。
NeO主将 #56 古井采那選手のコメント
「3度目と言えども、試合ごとに流れが違うので、常に相手の新たな情報を得て、スカウティングする必要があります。決勝戦は何があるか分からない舞台なので、しっかりと泥臭く自分たちのラクロスができればいいのかなと思います」
対するMISTRALの大野選手は、準決勝後に力強くこう語った。
MF #88 大野以千子選手のコメント
「5年連続の決勝戦。2年連続でNeOに敗れ、次こそはという気持ちで今年はシーズンインからやってきている。気合と、準備する期間も短いが、最後までやり切ってMISTRALの良さを出せたらと思う」
今シーズン、NeOに2連敗しているMISTRAL。しかし、決勝という特別な舞台では、これまでの対戦結果は関係ない。MISTRALの「次こそは」という執念が、NeOの盤石な体制に風穴を開けることができるのか。
それとも、NeOが今シーズン3戦目も制し、完全勝利でクラブ日本一を手にするのか。
東京で世界と戦う日へ向けて
この試合は、単なる全国大会の決勝戦にとどまるものではない。
2026年7月、ここ東京で女子世界選手権大会が開催される。日本女子ラクロス界にとって、自国開催という千載一遇のチャンス。そして2027年に日本で行われる男子世界選手権大会、2028年ロサンゼルスオリンピックへと続くラクロスムーブメントの、まさに最前線に立つのが、NeOとMISTRALの選手たちだ。
NeOが掲げる「ラクロスから世界へ」というスローガンは、決して遠い未来の話ではない。わずか半年後、この東京の地で、世界のトップチームと対峙する日が迫っている。
世界基準のラクロスを追求し続けるNeO。その完成度の高さは、今シーズンのMISTRAL戦2連勝、そして昨年の13-6という圧勝が物語っている。日本女子ラクロスの先頭に立ち、世界への道を切り開いてきたNeOが、さらなる高みへと駆け上がる姿を見せられるのか。
対するMISTRALもまた、全日本選手権大会優勝の実績を持ち、日本代表経験者を多数擁する強豪クラブ。5年連続で決勝に立ち続ける執念と、積み重ねてきた経験。そして今シーズン、NeOに2連敗しながらも、準決勝では17得点という爆発力を見せた攻撃陣。
MISTRALの執念が、ついにNeO王朝に終止符を打つ瞬間を生み出すのか。
女王の時代か、挑戦者の下克上か。2026年7月、東京で世界と戦う日本女子ラクロスの現在地は、2025年12月13日、大井ホッケー競技場で明らかになる。
大会情報
🏟️ 会場情報
会場:大井ホッケー競技場メインピッチ
住所:〒140-0003 東京都品川区八潮4丁目1-19
日時:2025年12月13日(土)
- 男子決勝: 11:00 フェイスオフ
- 女子決勝: 14:00 ドロー
🏆 対戦カード
【男子】
GRIZZLIES(東日本1位) vs KAWASAKI FALCONS(東日本2位・ワイルドカード)
【女子】
NeO(東日本1位) vs MISTRAL(東日本2位・ワイルドカード)
📺 無料ライブ配信
テレビ東京スポーツYouTubeチャンネル「テレスポ」にて無料配信!
実況はテレビ東京アナウンサー、ゲストに照英さん、まるぴさんをお迎えしての豪華配信となります。
🚃 アクセス
- 🚝 東京モノレール「大井競馬場前駅」より徒歩約8分
- 🚃 京急本線「立会川駅」より徒歩約20分
⚠️ 競技場専用駐車場はありません。公共交通機関をご利用ください。
📍 大井ホッケー競技場の魅力
大井ホッケー競技場は、東京湾に程近い品川区八潮エリアに位置する、人工芝のフルサイズピッチを擁する競技場です。
観客席とピッチの距離が近く、選手たちの声、スティックワークの音、そしてボールが空を切る音までもが間近で体感できるのが最大の魅力。配信では伝わらない、現地ならではの迫力と臨場感を存分に味わえます。
準決勝でも「観客席から近くで声援もたくさん聞こえていて力になりました」(男子・OPEC VORTEX #13山城主将)、「いいプレーしたらすごい歓声が聞こえるし、ドローの時も周りの声援はすごく聞こえるので、力になりました」(MISTRAL #88大野選手)と、選手たちも観客の熱い声援が力になったと口を揃えます。
また、男女の決勝戦を1日で連続観戦できるのも本大会の醍醐味。午前中の男子決勝で日本最高峰のパワーラクロスを堪能し、午後の女子決勝では技術とスピードが融合した美しいゲームを楽しめる、まさにラクロス尽くしの一日となります。
冬の澄んだ空気の中、日本ラクロスの「今」を体感しに、ぜひ足をお運びください。
2025年12月13日、大井ホッケー競技場メインピッチ。
女王の時代か、挑戦者の下克上か。
2026年東京で世界と戦う、日本女子ラクロスの現在地は、ここにある。










