Interviewインタビュー

【Inside JLAコラム】【全クラ1回戦特集⑥】「熱量」が答えを出す──ACL、再建3年目の答え合わせ

2025年11月8日(土)・9日(日)に行われる「日清食品presents第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会」の第1回戦に出場するのは、北海道、東海、関西、中四国・九州の4支部の優勝チームです。このコーナーでは各支部から出場するチームの見所をお伝えします。

第6回 関西支部(男子)からはACL


【ACL試合情報】

日時:2025年11月8日(土) 12:00フェイスオフ
場所:オクゼン不動産フットボールスタジアム(県営春日公園競技場)(九州会場)
対戦相手:Ardito(中四国・九州支部)

日清食品 presents 第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会 | JLA | 公益社団法人日本ラクロス協会
【11/8(土)クラブ1回戦@福岡】日清食品 presents 第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会 | Peatix

1回戦のライブ配信はこちらから(作成中)

※サイト開設後、お知らせいたします(LACROSSE MAGAZINE JAPAN編集部)


関西支部(男子)からはACL(エーシーエル)が「日清食品presents第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会」へ出場します。どんなチームか見所はどこか、ACL主将#16佐山新之介さんにお聞きしました。

ACL集合写真(2025年10月26日撮影)

3大会連続10回目の出場

ACLは、関西リーグ決勝戦へ3年ぶりに進出したGOLD ZEALER(ゴールドジーラ)と対戦し、3-3と同点。リーグ戦1位通過のACLが優勝、全日本クラブ選手権大会(以下、全クラ)へ3大会連続10回目の出場となりました。

【ラクロス全日本クラブ選手権大会 歴代出場チーム 関西支部(男子)】

クラブ選手権
支部リーグ戦
出場チーム(1位)
出場チーム(2位)
会場 対戦相手(2位)
対戦相手(1位)
支部 1回戦戦績
2000 2 7 HELP
ナニワラクロスクラブ
大井ふ頭中央海浜公園第2球技場(東京) RAGGAMUFFINS
VALENTIA
東日本 4-13 敗退
8-11 敗退
2001 3 8 NLC HORNETZ
HELP
王子公園陸上競技場(神戸)
大井ふ頭中央海浜公園第2球技場(東京)
ADVANCE
VALENTIA
東日本 8-5 決勝戦進出
6-2 敗退
2002 4 9 NLC HORNETZ
HELP
大井ふ頭中央海浜公園第2球技場(東京) RAGGAMUFFINS
VALENTIA
東日本 11-6 決勝戦進出
7-19 敗退
2003 5 10 HELP
NLC HORNETZ
大井ふ頭中央海浜公園第2球技場(東京) VALENTIA
DESAFIO
東日本 8-9 敗退
8-15 敗退
2004 6 11 NLC HORNETZ
GOLD ZEALER
大井ふ頭中央海浜公園第2球技場(東京) DESAFIO
VALENTIA
東日本 9-17 敗退
6-13 敗退
2005 7 12 HELP
GOLD ZEALER
大井ふ頭中央海浜公園第2球技場(東京) RAGGAMUFFINS
DESAFIO
東日本 5-7 敗退
1-20 敗退
2006 8 13 GOLD ZEALER
NLC HORNETZ
⾧居球技場(大阪)
大井ふ頭中央海浜公園第2球技場(東京)
DESAFIO
VALENTIA
東日本 11-16 敗退
7-14 敗退
2007 9 14 HELP
NLC HORNETZ
舞洲運動広場球技場(大阪)
大井ふ頭中央海浜公園第2球技場(東京)
VALENTIA
RAGGAMUFFINS
東日本 5-9 敗退
1-13 敗退
2008 10 15 NLC HORNETZ
HELP
舞洲運動広場球技場(大阪)
大井ふ頭中央海浜公園第2球技場(東京)
RAGGAMUFFINS
FALCONS
東日本 6-7 敗退
8-14 敗退
2009 11 16 HELP
GOLD ZEALER
舞洲運動広場球技場(大阪)
大井ふ頭中央海浜公園第2球技場(東京)
FALCONS
VALENTIA
東日本 2-15 敗退
9-10 敗退
2010 12 17 GOLD ZEALER
NLC HORNETZ
舞洲運動広場球技場(大阪)
大井ふ頭中央海浜公園第2球技場(東京)
FALCONS
VALENTIA
東日本 9-16 敗退
4-18 敗退
2011 13 18 OPEC VORTEX
HELP
豊橋市民球技場(名古屋)
大井ふ頭中央海浜公園第2球技場(東京)
DESAFIO
FALCONS
東日本 6-13 敗退
7-16 敗退
2012 14 19 OPEC VORTEX
ARM ARTISTA
鶴見緑地球技場(大阪)
広島広域公園第2球技場(広島)
BARBARIAN LIGHTS
FERVIENTE
中四国 15-2 準決勝進出
10-7 準決勝進出
2013 15 20 ACL
OPEC VORTEX
金岡公園陸上競技場(大阪)
ツネイシしまなみビレッジ(広島)
BARBARIAN LIGHTS
FERVIENTE
中四国 18-2 準決勝進出
17-5 準決勝進出
2014 16 21 ACL
ARM ARTISTA
(1位は準決勝から出場)
金岡公園陸上競技場(大阪)
BARBARIAN LIGHTS 中四国 14-5 準決勝進出
2015 17 22 ACL
HELP
ヤンマーフィールド⾧居(大阪)
びんご運動公園陸上競技場(広島)
BARBARIAN LIGHTS
FERVIENTE
中四国 12-8 準決勝進出
12-6 準決勝進出
2016 18 23 ACL 金岡公園陸上競技場(大阪) BARBARIAN LIGHTS 中四国 18-6 準決勝進出
2017 19 24 ACL ヤンマーフィールド⾧居(大阪) Ardito 中四国 26-1 準決勝進出
2018 20 25 ACL 江戸川区臨海球技場(東京) Ardito 中四国 13-3 準決勝進出
2019 21 26 ACL 防府市スポーツセンター(山口) Ardito 中四国 4-3 準決勝進出
2020 特 別 大 会
2021 22 27 HELP 岡山総合グラウンド補助陸上競技場(岡山) BARBARIAN LIGHTS 中四国・九州 8-5 準決勝進出
2022 23 28 GOLD ZEALER 鶴見緑地スタジアム(大阪) FERVIENTE 中四国・九州 7-3 準決勝進出
2023 24 29 ACL 鶴見緑地スタジアム(大阪) FERVIENTE 中四国・九州 8-5 準決勝進出
2024 25 30 ACL 大井ホッケー競技場サブピッチ(東京) Ardito 中四国・九州 5-7 敗退
2025 26 31 ACL オクゼン不動産フットボールスタジアム(九州会場) Ardito 中四国・九州

※2020年:新型コロナ感染症の感染対策のためにクラブ選手権・リーグ戦とも実施せず。
※1999年~2011年は準決勝と決勝のみ(1回戦=準決勝)。
※第1回(1999年開催)は東日本のチームのみ出場。西日本は2000年から出場。
※2014年までは「西日本支部」(現・東海支部のチームも当時西日本支部だったため現・関西支部リストの歴史に掲載)。
※2015年~「関西支部」(西日本支部という名前は消滅)。
※「1回戦戦績」欄の得点表記は、現・関西支部(西日本支部)が左。クラブ選手権のHOME・AWAYではない。
※NLC HORNETZ:2001年~。ナニワラクロスクラブからチーム名変更
※OPEC VORTEX:2006年~。中東ラクロスクラブからチーム名変更
※ACL 3大会連続10回目

残り29秒の死闘

関西リーグ決勝戦は、互いのゴーリーがナイスセーブを繰り広げ、3Qを 2-2で終了。4Qに入り、ベンチから「残り29秒」という声が聞こえてもまだ2-2でした。引き分けた場合、リーグ戦1位通過のACLが優勝します。

タイムアウト後、残り29秒でGOLD ZEALERが攻撃を再開すると、GOLD ZEALER#4清家悟選手が得点。2-3とGOLD ZEALERがリードしました。

今決勝戦で何度も危機を救ってきたACLゴーリー#2杉本健選手(本大会でMVPとなった)は得点後に崩れたまま、しばらく立ち上がれずにいました。

「残り24秒」。

ベンチから声が上がります。

フェイスオフでACLがボールポゼッションすると、#16佐山新之介選手がゴール前までボールを運ぶものの、GOLD ZEALERの固いディフェンスに阻まれます。

ゴール裏へ移動する間、佐山選手は何度もチームメイトへ大きな声で指示を出します。

時間が進む中、ゴール裏から佐山選手が出したパスをルーキー#26藤井直樹選手がキャッチ、ワンクレードルでディフェンスをかわすとシュート。3-3の同点へ。ノータイム。ベンチも観客席も沸きます。

アシストを出した佐山選手は、シュートを撃った藤井選手のクロスチェックの間、何度も何度も雄叫びを上げながらベンチに戻り、チームメイトはその佐山選手に肩が外れそうなほどの強いハイタッチを求めました。

クロスチェックは無事合法と判定され、得点は有効。試合終了のホイッスルでACLの全クラ進出が決まりました。

前年の全クラ1回戦敗退

2023年にチーム再建を謳い主将となった#16佐山新之介さんは、2021年から2年間、関西リーグ決勝戦敗退で全クラ出場できなかったACLを、3年連続で全クラへ出場するチームに建て直しました。

主将に就任する際、佐山さんは「3ヵ年計画」を立てました。

1年目(2023年)の目標は「全クラ出場」、2年目(2024年)は「日本一」、3年目(2025年)は「再び日本一」、そして日本一を継続できるずっと強いチームにしたいと土台作りに着手し、1年目の目標である「全クラ出場」を実現しました。

2年目の目標である「日本一」は、全クラ1回戦で中四国・九州支部のArdito(アルディート)に5-7で敗退したことで叶いませんでした。全クラに出場して、準決勝へいけなかったのはACL史上初めてのことでした。

「負けるには理由があったと思っています」。

佐山さんは振り返ります。

「1年目のときは、うまくいく環境だっただけで、自分たちが考えていたことが、実は脆かったんだということが分かった。3年目の今年、自分たちはどういうラクロスをしていくべきか、もう一度根底の部分から見直ししました」。

ACL全員の1年間が繋いだシュート

関西リーグ決勝戦の最後の同点ゴールは、佐山さんが「勝ち」を信じた魂の表れだと思えてとても感動をしました。

「そう思ってもらえたならよかった。ラクロスをやっていてよかった。がんばってきてよかった」

佐山さんははにかみますが、あれは自分だけではなくチームメイトの誰もが諦めていなかった得点だと付け加えました。

「直前に点を取られたときに、僕は『まじか、やべえ、終わる』って思ったんです。だけど、横にいる選手が…誰かは覚えてないですけど、『まだあるよ』って僕に言ったんです。自分でもまだあるとは思っていたけれど、声を掛けてくれていなかったら、自信を持ってプレーできていなかったと思います。ACLは誰かが落ちていたら『まだいける』って言うし、誰かが困っていたら助ける。あの1点は全員の思いのたまもの。感動したというなら、ACL全員に対して感動しているということです。産みの苦しみを全員で超えた気がした。去年の負けをよかったと言えるものにしたかった。苦しかったけれど、みんなで越えられたんだと思っています」。

みんなでつないだ得点

会場で「熱量」を感じてほしい

ACLが出場する全クラ1回戦の会場は「オクゼン不動産フットボールスタジアム(県営春日公園競技場)」(九州会場)です。関西地区から離れていますが、ライブ配信で見てもらうために、関西地区の大学生に向けて佐山さんからメッセージをお願いしました。

「全クラ1回戦を会場に見に来る大学生が少ないというのならば、それは上手い見本が近くにいないということかなと思っています。

関東(東日本)チャンピオンリーグ1部のGRIZZLIES(グリズリーズ)やKAWASAKI FALCONS(カワサキファルコンズ)、Stealers(スティーラーズ)の試合だと大学生は見に来るのに、関西地区に限定していうと、関西の大学生が関西のクラブチームを見に来ることが少ないのは、『この熱量でラクロスをしたい』と思える見本が身近にいないということなんだと思います。

ACLは、3年間の再建のなかでラクロスに対する『熱量』が出てきたんじゃないかと思っています。自分が社会人でラクロスを続けているのは、ラクロスがおもしろいからです。そりゃそうですよね、楽しいですよ。大学生から一つ成長した『社会人』という括りのなかで、みんなで議論を持ちあって、進んでいくのはすごくおもしろい。

ラクロスというスポーツは、大学の4年間でうま味が吸えるようなスポーツじゃないと思うし、上手いとか下手じゃなく、このスポーツを4年間で辞めるのはもったいないと思います。こんな『熱量』を体感できる場所はここ(試合会場)にしかない。

全クラをラクロスライブ配信で見てもらうのもいいとは思うけれど、直に観に来たほうが価値はある。

僕たちは大学生より気持ちは熱いですよ、絶対。特に今年のACLは『負けたくない』という思いが強いから(チームとして)強いですよ。選手みんなの目がいい。それを感じてほしい」。

佐山さんの言葉を聞いていると、会場がある九州地区の大学生達にももっと観に来てもらいたいと思いました。

九州地区で身近な存在のArditoはすごいチーム

「それなら、九州地区の大学生向けに書いてほしいことがあるんです」。

佐山さんは言います。

「まず一つは、九州の大学生にとって身近な存在であるArditoっていうチームはすごいチームなんだよということです。

Arditoは去年、『自分たちが勝つためには、こういうことをしなくてはいけない』ってことを徹底してやってきました。

社会人になって仕事をしながら、大学の部活という範囲じゃないところで、その『熱量』を保つっていうのはめっちゃ難しくて、それをやって勝ったのですから、すごいチームなんです」。

ACLの選手はいい目をしている

佐山さんは続けます。

「もう一つ、今年のACLを関西のクラブチームのラクロスシーンとしてではなく、一(いち)スポーツチームとして見てほしい。

去年、僕たちは強い強いと言われていたのに、全クラ1回戦で敗退しました。

恥ずかしい思いもして、悔しい思いもして、今年に入っても関西リーグ戦で全然うまくいかなくて、それでも全試合なんとか這いつくばって今日(関西リーグ決勝戦)優勝して、そうやって全クラまできた人間たちの『熱量』とか、苦しいことを越えてきたスポーツチームの強さを観てほしいと思っています。

乗り越えた選手の目がいい。ACLの選手はいい目をしています。それを直接会場へ行ける九州の人たちに見てもらいたい。自分たちが正しかったかどうかが分かる一戦になるんですから。新しくラクロスを作り直して、若い人間が入ってきて、ベテランも移籍してきて、すごい産みの苦しみを全員で味わって越えて来たチームが、正解だったのかそうじゃなかったのか。そこでしか分からないじゃないですか。僕たちにとってArdito戦は答え合わせです。

会場にはArditoを応援しにくる人が多いだろうし、観客はArditoに対して2年連続1回戦突破を期待するだろうし、僕たちが思うようにいかないだろうけど、そんななかで自分たちがやりたいこと、苦しんで作ったものを披露できるんですから、めっちゃ楽しみですよ。

ACLが上手いとかそんなんじゃなくて、大学生に『なんかすごいな』『本気やな』というのを感じてほしい。

関西からライブ配信を見るってなるんやったら、画面から本気を感じ取ってほしい」。

ACLの本気を感じ取ってほしい

本気のオトナたちを観に来てほしい

佐山さんが「3ヵ年計画」を立てたのは3年前で今年がその最後。佐山さんが最前線での選手を退く期限でもありました。

「(選手生活が)関西リーグ決勝戦で終わらんでよかった」と佐山さんは冗談めかして安堵します。

ACLとArditoの本気を目の前で見たいと思わせる佐山さんの『熱量』はACL全体の熱量でもあります。

九州地区の大学生の皆さん。オクゼン不動産フットボールスタジアム(県営春日公園競技場)へ足を運んでください。

会場に行くことが難しい皆さんは、ラクロスライブ配信がありますので、画面を通しても伝わる『熱量』を感じ取ってください。


【チーム詳細】

【プロフィール】

  • 名前:佐山新之介
  • 背番号:#16 MF 主将
  • 出身大学:2008年3月 同志社大学卒業
  • クラブチーム選手歴:2012年~ ACL

Photo by 日本ラクロス協会広報部 中村真澄
Text by 日本ラクロス協会広報部 岡村由紀子


【前大会記事】

【日清食品presents第25回ラクロス全日本クラブ選手権大会1回戦特集】~各支部のクラブチームってどんなチーム?(関西支部・男子編)~ | ラクロスマガジンジャパン

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