Interviewインタビュー

【日清食品presents第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会】1回戦九州会場レポート~得点を重ねることが自分たちの役割

2025年11月8日(土)、「日清食品presents第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会」1回戦SIRIUS(シリウス)対NLC SCHERZO(エヌエルシースケルツォ)がオクゼン不動産フットボールスタジアム(県営春日公園競技場)で行われ、6対15でNLC SCHERZOが勝利し、準決勝へと進出することになりました。NLC SCHERZOが準決勝で対戦するのは東日本1位のNeO(ネオ)です。

【スコア】

1Q 2Q 3Q 4Q total
SIRIUS 2 0 1 3 6
NLC SCHERZO 1 6 5 3 15

【得点者】

SIRIUS NLC SCHERZO
#2 田崎未結 1 #5 木村有希 3
#16 鬼束あかね 1 #10 井倉涼子 1
#19 木戸ひかり 1 #14 松田阿布羅 3
#30 稲田明日香 1 #17 平井花林 4
#45 米澤陽子 1 #21 我妻彩里 1
#95 小野萌子 1 #29 小原日和 2
#34 藤原万里子 1

全クラ初開催の九州で沸くSIRIUS応援席

#45米澤陽子選手のシュートで盛り上がるSIRIUS

「日清食品presents第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会」(以下、全クラ)1回戦は、6大会連続同じカードであるSIRIUS(中四国・九州)対NLC SCHERZO(関西)。「日本一」を掲げるNLC SCHERZOと「下剋上」を掲げる挑戦者SIRIUS。全クラ初の九州開催で、観客の声援を受けてSIRIUSの下剋上なるのか。

1Q はSIRIUSペース

(本文中の得点は、HOME対AWAYの並びです)

1Q 開始3分にSIRIUS#19木戸ひかり選手が1on1で先制し1-0へ。その後、両者シュートを放つも互いのゴーリーがセーブ。時間が流れ、開始8分にSIRIUS#95小野萌子選手のシュートで2-0とSIRIUSがリード。

NLC SCHERZOの得点は、「フリースペーストゥゴールの侵害」でフリーシュートを与えられた#14松田阿布羅選手が走り込んでシュートし2-1へ。SIRIUSがリードのまま1Qは終了。

ゴールへ向かうNLC SCHERZO#14松田阿布羅選手

2QにNLC SCHERZOが本来の力を出し始める

1Qから互いに放つシュートがゴールバーに当たり得点にならない場面がありましたが、2QでもSIRIUS#45米澤陽子選手のシュートがバーに当たり、NLC SCHERZOボールへ。NLC SCHERZO#17平井花林選手が1on1で決め2-2へ。

続いてNLC SCHERZO#14松田選手も同志社大学同期コンビの#17平井選手からのパスを受け本日2得点目を決め、2-3と逆転。

NLC SCHERZO#29小原日和選手が1on1からのシュートで2-4。

その後もNLC SCHERZOの攻撃が続きますが、SIRIUSゴーリー#1狛朋菜選手がセーブし得点になりません。ゴール裏からフリーで出てきた#34藤原万里子選手のシュートもしっかり止めます。

ビッグセーブするSIRIUSゴーリー#1狛朋菜選手

しかし、クリア途中にSIRIUSが落としたボールをNLC SCHERZO#29小原選手がスクープ、ゴール前に走り込んでいた#5木村有希選手へパス。高めのパスをなんとかキャッチし、その高さのままゴールへ叩き込み得点し2-5へ。

#5木村選手はシュート後、「高いんだよ」と言わんばかりのジェスチャーで#29小原選手を指し、互いにクロスを合わせて得点を喜びます。

続いて、ドロワーでもあるNLC SCHERZO#29小原選手が本日2得点目で2-6へ。

2Q最後は、パス回しでディフェンスをずらし、「フリースペーストゥゴールの侵害」でフリーシュートを与えられた#5木村選手が得点し(本日2得点目)2-7になったところで試合終了。

ドローを上げ、シュートも決めるNLC SCHERZO#29小原日和選手

3Q得点差は広がっていく

3Q開始2分、ゴール前に一人抜けたNLC SCHERZO#10井倉涼子選手が、SIRIUSディフェンス#6藤ひかり選手の強い当たりもものともせず1on1で得点、2-8とリードを広げます。

NLC SCHERZOの攻撃は続き、パス回しでディフェンスがずれところへ、#34藤原選手がパスを出し、#5木村選手がキャッチし本日3得点目の得点で2-9へ。

続いて、「フリースペーストゥゴールの侵害」でフリーシュートを与えられた#14松田選手が自分で打たずに、ゴール横にフリーで構える#34藤原選手へパス、#34藤原選手が確実に決めて2-10。

3Qからドローを上げているNLC SCHERZO主将#9新海美波選手は、ドロー後のグラウンドボールを自分でスクープし攻撃に繋げ、#17平井選手が1on1で本日2得点目を得点し2-11とすると、#21我妻彩里選手が得点し2-12へ。

ドロー後、グラウンドボールと取り合うNLC SCHERZO#9深海南美選手とSIRIUS#30稲田明日香選手

残り3分。SIRIUSゴーリー#1狛選手からのクリアで#2田崎未結選手が自陣へボールを運ぶと、ゴール裏から1on1を仕掛けた#45米澤選手がシュート、3-12とし3Qは終了。

4Q にSIRIUSが3得点するもNLC SCHERZOに軍配

4Q開始2分、SIRIUS#2田崎選手が得点し4-12。6分にはNLC SCHERZO#14松田選手が本日3得点目、続けて#17平井選手も本日3得点目を上げ4-14へ。

10分にSIRIUS#16鬼束あかね選手のジャンピングシュートにより5-14、12分に3秒ルール違反で#30稲田明日香選手にフリーシュートが与えられると、#30稲田選手が1on1で持ち込み6-14へ。

SIRIUSの連続2得点に地元九州地区の大学生たちはスタンドで一気に湧きます。

残り2分を切ったところでNLC SCHERZO#17平井選手がシュート。「フリースペーストゥゴールの侵害」の笛と同時でしたが、得点は認められ本日4得点目となる6-15へ。ドローが上がり、NLC SCHERZOが攻撃を始めたところで試合終了。NLC SCHERZOが勝利し、準決勝進出が決まりました。

グラウンドボールでも競り勝つNLC SCHERZO#5木村有希選手

2025年11月8日 SIRIUS対NLC SCHERZOの見逃し配信はこちら

得点するポジションにいる者の責任

2025年11月29日にヤンマーフィールド長居(大阪)で行われる準決勝・NeO戦は「日本一」を目指すNLC SCHERZOにとっては大きな山場。本日4得点したNLC SCHERZO#17平井花林さんと、3得点し且つNLC SCHERZOの1得点目を上げた#14松田阿布羅さんに目標をお聞きしました。

「目標は点を取ることです。ただ点を取るというよりかは、先制点を取ってほしいとか、ここで1点取ってほしいとかチームから任せてもらっているので、その責任へのプレッシャーに打ち克って点を重ねていくことです」(#17平井花林さん)。

「わたしも点を取ることです。1点を取ってチームの流れを作ることがわたしのひとつの役割だと思っているので、先制点やチームがしんどいときの1点というところをしっかり取って流れに乗せられるようにしたいと思っています」(#14松田阿布羅さん)

今日の試合で役割は果たせたか

今日の試合で意識したことがなんだったのでしょうか。

「最初から意識していたわけではないのですが、SIRIUSに先制点を取られてチームの雰囲気も『どうしよう』となっていたとき、ここは自分が強くいって点を取るしかないなと思いました。

1Qで阿布羅がフリーシュートを決めたので、次は自分が取って流れを作ろうと、2Qで1on1を強く行って1点を取りました。

そのあと、わたしから阿布羅へのアシストで阿布羅が得点して、相手が『いけるぞ』と思っているのを断ち切りたかった。それで流れが変わったかわからないですが、点をポンポンと重ねられたのはよかったことです」(#17平井さん)。

「先制点を取って流れを作ることを意識していました。NeO戦でも意識していることです。NeO戦は、これまで以上に厳しい戦いになるので、試合の流れ・自分たちのリズムの作り方を今日の試合から意識していました」(#14松田さん)。

先制点を取られてしまうことについて

NLC SCHERZOは、関西リーグ決勝戦のChez(チェス)戦でも先制点を取られています。

「立ち上がりについては課題です。だからこそ、次の試合では自分たちが先制点を取るようにしていきたいです」(#17平井さん)。

観客席から「後半に盛り返したね」という声が聞こえたのですが、後半に何かを変えたのでしょうか。

「前半はいつも乗り切れずに終わる傾向があります。徐々に修正していくということが多いので、ビハインドから入るというのはいつも通りといえばいつも通りなんです。ただ、後半盛り返したように見えたのならば、前半は自分たちのミスが原因だったところもあるので、ミスを切っていこうとベンチで話し合いをしました。後半にミスが減ったことが、観客から盛り返しに見えたのかもしれません」(#14松田さん)

ベテラン選手たちへの思い

2025年度の活動が始まる前、前主将#34藤原万里子さんや2011年の日本一を経験している#10井倉涼子さんといったベテラン選手が続けるかどうか迷っていた時期があったといいます。若手選手はその時期のことをどう思っていたのでしょうか。

「辞めないでー! と思っていました」(#14松田さん)

「(自分自身が6月まで東京だったので)関西に戻ってきて、井倉さんたちが迷っていると聞いたときは、続けてほしいと思いました。チームに戻ってきてくれてよかった」(#17平井さん)。

インタビュー中、平井さんも松田さんも、「来年も一緒にプレーしたいので、続けたいと思ってもらえるような心が動く文章を書いてください」と頼んできました。若手選手たちに慕われるベテラン選手。チームの雰囲気の良さが伺えます。

来年もフィールドにいてほしい

続けるかどうか迷った理由

#34藤原万里子さんに、続けるかどうか迷った時期の話をお聞きしました。

「悩んでいた時期に、立命館大学HCという枠での依頼を受けました。久しぶりに学生の現場に戻ると決めたときに、現役選手でない自分は価値がないのかなと悩んだんです。そこで一番難しい選択肢を取ってみようと思い、現役選手とコーチの両方をやると決めました」。

クラブチームにおいて、現役選手をどこまで続けるか。誰もが悩むところではあります。

「わたしは主将を2年連続、通算4年やってきたし、幹部を入部2年目以降13年やってきました。エネルギーが消えたというのもあります。でも、チームにファーストだったところから一旦リセットして、HCの依頼を受けて、現役も続けると決めました。練習に行けない日もあり、チームに迷惑を掛けたところもありますが、ラクロス熱は下がらなかった。今年は名古屋から移籍してくれたメンバーもいるので、新人も含めて、これまでのメンバーともラクロスができているので続けてよかったと思っています」。

「関西から日本一」は外せない

全クラ準決勝戦に向けての意気込みをお聞きしました。

「1年間、全クラ準決勝にしかフォーカスしてこなかったので、対戦相手が東日本1位だろうが2位だろうが、そこが最大の山場で、それを取った上での日本一なので、やっと準備してきたことが満を持して出せるなというわくわくのほうが大きいです。『関西から日本一』は外せない。去年は自分がそう言っていたのに準決勝敗退しました。でも、それを聞いて今年も続けようと思ってくれたメンバーもいたので、NeO戦もがんばろうと思います」(#34藤原さん)。

「関西から日本一」は外せない#34藤原万里子選手

続けるには覚悟がいる

今年もフィールドに#10井倉涼子さんがいる。姿を見たとき、なぜかほっとしました。継続を迷い、どうしてまた続けることにしたのかお聞きしました。

「続けるには覚悟がいる」。

井倉さんは2018年に引退してから4年後、2023年に現役選手に復帰して今年3年目です。

「何かを還元できるエネルギーがないと続けてよかったなとならない。続けるか迷ったのは、去年『日本一』に見合う活躍が自分としてあまりできていなかったから。『日本一』になるために自分がそこにいて何ができるのかを考えて、やるかやらないか決めています。

続けたのは、このままで終わりたくないという悔しい気持ちが半分と、ここまで『日本一』を目指して入ってきてくれた後輩がいるので、その人たちが困っているのであれば助けたいな、それならできるかなと思ったからです」。

NeO戦で何を得たら続けようと思えるのか

まだ準決勝も残るなか、来年のことを聞くことはどうかと思いつつ、どんな結果を手にすれば、井倉さんはまた続けようと思うのか知りたくなりました。

「NeO戦ももちろん勝つつもりですが、NeOはこれまで日本一に5回なっているし、日本代表選手も多く所属するチームです。観客の多くはNLC SCHERZOが勝てるなんて思っていない。そんななかで、どれだけ自分たちが目指すものを体現することができるか。『日本一』という結果を形に残すことも大事だけれど、それよりもチームとして大事にしてきたものをちゃんと出せるかどうかだと思っています」。

NeOと力の差はあっても心の差はないと思ってもらえるプレー

チームとして大事にしていることは何なのでしょうか?

「例えば、NeOなど関東のトップチームとの戦いでは、NLC SCHERZOのディフェンス時間はかなり長くなります。ディフェンス陣はヘロヘロになりながらもゴールを守り、奪い返したボールをオフェンス陣に託してくれる。当たり前のように思うかもしれないですが、これは勝ちたいと本当に心の底から全員が思っていないとできない献身的で信頼が必要なプレーです。力の差はあっても、『日本一になる』ということに対する心の差はないと見ている人が思えるような泥臭いプレーをしていきたいです」。

こっちにも寄越せとは思っています

「今シーズン、調子が悪かった」と井倉さんは言いますが、3年連続で関西リーグ戦の得点王です。

「それはみんなのおかげです。最後にパスをくれるから得点できました」。

若手エースの#17平井さん、#14松田さんも「自分にパスをもらえるのだから、得点していきたい」と語っていました。

「もちろん若手選手の活躍は心から嬉しいですが、やっぱりこっちにもボールを寄越せ、とは思っています。3回に1回くらいはちょうだいよとチームメイトにも言っています」。

あ、ちゃんとボールくれって言うんですね! 井倉さんが得点に貪欲であることを知れて嬉しくなりました。それこそが続ける原動力だと思うからです。

井倉涼子選手

新旧選手が織りなすNLC SCHERZOの得点シーン。パス展開の早さとディフェンス陣の粘り強さ。「関西から日本一」を狙うNLC SCHERZOのプレーをヤンマーフィールド長居で直接見てみませんか。

会場へ行けないみなさんは、ライブ配信をご覧ください。

全クラ初の九州開催!

九州地区の大学生にクラブチームの試合を見てもらいたい

ここからは、日本クラブチームラクロス連盟(以下、クラブ連盟)副本部長の前田実咲さん(Cierra所属)に、初めての全クラ1回戦九州開催への思いをお聞きしました。

「九州のクラブチームSIRIUSとCierra(シエラ)は、中四国支部のリーグ戦に入れてもらっている立場なので、女子の試合は中四国エリアのみで開催されてきました(今年初めて1試合が九州エリアで行われた)。全クラ1回戦を九州で開催し、九州地区の大学生たちにクラブチームの試合を見てもらいたかった。クラブチームには、大学のコーチをしている選手も多くいます。コーチが戦っている姿を大学生たちに直接見てもらいたかったので、実現できてよかったです」。

会場では、中四国・九州代表のSIRIUSボールになるたびにスタンドから歓声が上がり、多くの大学生たちが訪れていることが伺えました。

「スタンドに来ていたのは現役生だけじゃなかったんです。ラクロスから離れた人が久々にラクロスの会場に来ていました」。

全クラ開催をきっかけに、懐かしい顔ぶれが揃うとはとても嬉しいことです。

「会場であるオクゼン不動産フットボールスタジアム(以下、春日)は、学生の頃ならだれもが試合をしたことがあり、思い入れがある場所です。学生リーグ戦のファイナルや入替戦、今年だと全学など大きな試合で使われることもあり、学生たちにとっては目指す場所でもあります。その春日でコーチが試合をしている。学生にとっては熱いですよね」。

運営自体はクラブ連盟本部や中四国・九州支部のスタッフにより行われましたが、前田さんは来期にクラブチームで続けてもらいたい4年生にも声を掛け、運営を手伝ってもらったと言います。

「全クラ1回戦が行われる11月初旬は、全学へ出場するチーム以外4年生が引退をする時期です。ラクロスに情が残るタイミングでクラブチームの試合に携わってもらい、続けようというイメージを持ってもらおうと思いました」。

初めての九州開催で改善点はまだまだあるけれど、続けることが大事と前田さんは言います。

「運営は大変ですが、九州地区の大学生に試合を見せることのほうが大事。会場で試合を見て、選手の熱量や会場の雰囲気を感じて学生がそれぞれ持ち帰って、自分たちのラクロスに活かしてほしいんです」。

全クラの試合を直接見て育つ選手たちが、また九州地区を強くしていく。前田さんは来年の開催も目指していると言います。

【準決勝(大阪会場)試合情報】

 

Photo by 日本ラクロス協会広報部 小保方智行
Text by 日本ラクロス協会広報部 岡村由紀子

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