【日清食品presents第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会決勝戦】 ～『先手』でMISTRALが新しい風を起こす～

どちらの視線が勝利をもたらしたのか

昨年の女王NeOは「ラクロスから世界へ」をチームヴィジョンとし、「世界で戦えるチーム」を目指します。一方、挑戦者MISTRALは「風を起こす」をチームミッションとし「一人ひとりが小さな風を起こし」、「ラクロス界に大きな風を吹かすこと」を目指します。広い世界を見つめるNeO。深く己を見つめるMISTRAL。どちらの視線が勝利をもたらしたのか。試合を振り返ってみます。

1Qは両者譲らず3-3とシーソーゲーム

(本文中の得点は、HOME対AWAYの並びです)

1Q最初のドローはNeO#24小林千沙選手とMISTRAL#16井上果歩選手により行われ、MISTRAL#16井上選手のポゼッションで試合がスタートします。

開始30秒、NeOの3秒ルールによりMISTRAL#22奥津佑香選手にフリーポジションが与えられると、#22奥津選手が笛の合図でゴールへ向かい左手でシュート。MISTRALの先制で0-1とします。

開始3分半、MISTRALのファールによりマンダウンディフェンスとなると、NeO#24小林選手が得点し、1-1とNeOが追いつきます。

更に開始5分、MISTRALのファールでもう一人退場となると、2人少ない間にNeO#21ジョーンズ萌仁香選手がフリーでパスをもらいクイックシュート。2-1とNeOがリードします。

一人がフィールドへ戻っても、まだ一人少ないMISTRALですが、#17ゴーリー永田亜美選手のセーブでピンチをしのぎます。このセーブからのクリアで、#0鈴木理沙選手がゴール前までボールを運ぶと、ゴール裏の#12櫻井美帆選手へパス。開始7分に#12櫻井選手が1on1からのシュートで、MISTRALが2-2の同点とします。

残り4分。1on1で粘るNeO#21ジョーンズ選手はリストレラインにいる選手にパスを出すと見せかけて方向転換、ディフェンスの不意を突きシュート。本日2得点目を上げ3-2へ。NeOが再びリードします。

残り2分では、1on1で粘るMISTRAL#12櫻井選手に対し、NeOディフェンスが激しくぶつかり、イエローカードが出ます。フリーシュートが与えられたMISTRAL#12櫻井選手は笛の合図でゴールへ向かいシュート。2得点目を上げ再び3-3の同点へ。

MISTRALゴーリー#17永田選手がNeO#3山根萌奈選手のシュートを止めたところでホイッスル。1Qは3-3の同点で終了します。

2Q、MISTRALが3連続得点で4-7へ

開始30秒、2Q最初のドローをNeOがポゼッションすると、MISTRALがダブルディフェンスでNeOからボールを奪います。センターラインで構えるMISTRAL#12櫻井選手へパスが渡ると、ゴールまで走り込みシュート。3得点目を上げ、3-4とします。2QでもMISTRALが先制。

2Qから出場したMISTRALゴーリー#93川村茉央選手がNeO#21ジョーンズ選手のシュートを止めますが、NeOがポゼッションのまま開始3分。NeO#23山本真菜美選手が15mラインからの1on1でシュート。4-4とまたしてもNeOが同点に追いつきます。

これまで3得点しているMISTRAL#12櫻井選手の1on1をどうしても阻止したいNeOディフェンスがイリーガルコンタクトでマンダウンとなると、開始5分にMISTRAL#88大野以千子選手がゴール前でフリーとなりシュート。4-5とMISTRALが再びリード。

4本目のドローがNeOファールによりMISTRALボールでスタートした開始7分、マンダウンが続くNeOディフェンスをMISTRALがパス回しで翻弄し、MISTRAL#22奥津選手にパスが渡りシュート。一度フェイクを入れて撃ったアンダーシュートはゴールネットを揺らします。本日2得点目で4-6へ。

続くドローでもNeOにファールがあり、MISTRALボールからスタート。マンダウンが解除され、NeOディフェンス#89井上綾花選手がMISTRALからボールを奪いますが、MISTRALゴーリー#93川村選手のセーブによりMISTRALのクリアへ。NeOがなかなか得点できません。

残り30秒。NeOが枠外へ撃ったシュートをMISTRALディフェンスがマイボールにするとパスで繋ぎ、最後はMISTRAL#99織田陽子選手のワンクレードルからのシュートで得点。4-7とMISTRALのリードで2Qが終了します。

3Q、MISTRALゴーリー#93川村茉央選手が失点0に抑える

MISTRALゴーリー#93川村選手が3Qを無失点に抑えるなか、MISTRALオフェンスが得点を上げ、流れをさらにMISTRALへと持っていきます。

残り2分、ファールによりNeOディフェンスがマンダウンとなると、MISTRALは一人多い状況を活かし、大きなパス展開から#16井上選手へボールを託します。#16井上選手が1on1からのシュートを決め4-8へ。

残り1分では、MISTRALディフェンスがチェックでNeOからボールを奪うと、MISTRAL#12櫻井選手へとパスをつなぎます。#12櫻井選手がゴーリー左上のネットへ叩き込んで4-9へ。MISTRALがリードを広げ3Qが終了します。

4QもMISTRALが無失点に抑え勝利

追い込まれたNeOは4Qに入り守り方を変えます。NeOゴーリーがリストレイニングラインの向こうにいるアタック選手と入れ替わり、ディフェンスを7人にすることでMISTRALオフェンスへの当たりを強くする作戦です。

ゴールを空けてでもMISTRALに撃たせたくないNeOですが、開始6分半、ゴーリーとアタックが入れ替わる前に、ディフェンスを1枚抜いたMISTRAL#52藤村選手が無人のゴールへボールを叩き込みます。4-10へ。

途中交代したMISTRALゴーリー#17永田選手がNeOのシュートを連続で止め、4QでもMISTRALが無失点のまま試合が終了。4-10でMISTRALが勝利しました。

2025年12月13日NeO対MISTRAL見逃し配信はこちら(rtv)

3Qを0点で抑えることができたら勝てる

MISTRALは4得点した#12櫻井美帆選手を始め、6人の選手が合計10得点を上げ勝利につなげました。得点だけではありません。失点を4点に抑えたゴーリー#17永田亜美選手と#93川村茉央選手も勝利に大きく貢献しました。なぜ、あんなにも守ることができたのか。2Qから4Qの途中までゴールを守った#93川村選手にお話をお聞きしました。

「チームとしても3Qを0点で抑えたら勝てると思っていました。自分の強みがセーブ力なので、3Qに出場する準備をして今日に挑みました。立ち上げのところは、#17永田選手が安定して立ち上げてくださるので、二人で役割分担をしました。昨シーズンはチーム内でのライバル意識もあり、1枚目で出たいと思っていたのですが、今シーズンは『ここでがんばれ』と言われたところで全力出し切って、任せてもらえるように調整しました。そこが去年とは違うところです」

セーブは、ディフェンスとの連携がうまくいっていたということでしょうか。

「(東日本リーグの)プレーオフではNeOに12-5と大差で負けのですが、そのなかでもうまくいっていたディフェンスの戦術があったので、今回の試合では一発目からそれで行こうとチームで決め、それが上手く出せた結果だと思います」

いままでのディフェンスと変えるとき、ゴーリーとして合わせるのが大変だったのではないでしょうか。

「大変というより、全員が自分たちのディフェンスに向き合って、相手が嫌がるディフェンスってこうだよねと作っていく感じだったので、その戦術にゴーリーが合わせていくのは、どちらかというと楽しかったです」

海外選手のシュートに基準を合わせてきた

自分たちでディフェンスを作っていくなかで、最終的にゴーリーである自分が止めるとなったとき、意識したことは何でしょうか。

「セーブで言うと、自分が日本代表(※)としてアメリカ遠征に行かせていただいた際に、うまい選手と言うのはシュートレンジが長くて、どこからでも打って来るというのを感じました。海外選手のシュートに基準を合わせて、どこからでも打たれるのだから、常に早めの準備を心がけてきました」

※2025-2026年日本代表選手(2026 WORLD LACROSSE 女子世界選手権大会)

今回の試合を見ていて、わざとそこへシュートを撃たせているのかというくらい止めておられたのは、海外選手との対戦のおかげだったのですね。

「本当にそうですね。海外選手のシュートを見据えて自分もセーブのレベルを上げてくれば、絶対に日本でも通用すると思ったので、そこは個人として意識していました」

「日本一」と日本代表とは分けて考えている

日本代表という言葉が出ましたが、A1に向けた気持ちと、世界大会に出る気持ちとは分けて考えているのか一緒なのか教えてほしいです。

「日本代表とMISTRALとでは、わたしは分けて考えています。MISTRAL選手として戦っているときは、チームのために戦っているので、今年のチーム目標である『A1で日本一』を達成するために、しっかりとがんばりたいと思っています。

日本代表としての意識は、日本代表選手がたくさんいるNeOに対して、普段のリーグ戦で負けているわたしたちが脅威を見せないと、日本代表全体のレベルも上がらないなと思っていたので、そこはMISTRALという立場でNeOに勝ちにいって、日本代表全体のレベルも上げたいとすごく思っていました」

A1で学生チームと戦うことについて

A1では学生チームと戦うことになりますが、これまでのクラブ相手の戦いと気持ちを変えたりするのでしょうか。

「学生は4年間掛けて、A1に出場できる最後の1校となって出場してくるので、物語がいろいろあるなと思うと怖いです。ただ、社会人もその4年間を経て、社会人として1年1年続けるか続けないか、続けるとしてどういう思いで今年は続けるか思いがこもったクラブリーグなので、クラブ代表としてしっかり学生に真っ向勝負で挑みたいと思っています」

オフェンスもディフェンスも「先手」を取ったことで得た勝利

ここからはMISTRAL主将#9井田ほのかさんに全クラ決勝戦で意識したことをお聞きしました。

「オフェンスもディフェンスも『先手』を取るというのをとにかく意識しました。相手が何かを仕掛けてくるのを待ってから対応するのではなく、すべてMISTRALから先手を取りに行きました。

オフェンスでいうと、クリアからセットオフェンスに持ち込むのではなく、ブレイクを仕掛けて必ずシュートを1本撃つというのを徹底しました。状態が悪くても撃ち切って、相手をひるませてから、再度攻撃を仕掛けると言うのをチームとして徹底しました。

ディフェンスも、相手がセットし攻撃してくるのを待つのではなく、そもそもセットさせないようにライドから相手にプレッシャーを掛けてボールを奪いに行きました。また、ライドで言うと、意図的に狭いところへ誘導し、ダブルチームでボールを奪いに行くということも徹底しました。『守る』と言う感覚は一切なかったです。

東日本リーグのプレーオフ決勝でNeOに負けたのは、全部受け身だったからです。受け身では勝てないと分かったので、とにかく『先手オフェンス』『先手ディフェンス』を徹底しました」

A1も「先手」で勝ちに行く

A1に向けて意識していることはなんでしょうか。

「チームとしては、全クラ決勝でも披露できた『先手オフェンス』『先手ディフェンス』です。今年のチームの最大の強みだと思うので、A1までに徹底的にその精度を上げていきます。

個人としては、ディフェンス6人とゴーリーとで連動し奪うというのをするとき、自分がその連動の起点を作れるようなプレーを試合を通してしたいと思っています」

「学生」へのリスペクトも持って戦う

対戦相手が学生ということで、意識することは何でしょうか。

「自分も大学生のとき、全日本大学選手権大会(以下、全学)決勝戦(※2)へ出場し、日本体育大学と戦いました。自分も対戦相手もそうですが、学生は相当なエネルギーでプレーをしてきます。学生とクラブチームとで、そこまで違わないと思いますが、当時のエネルギーとかワンプレー、ワンプレーの粘り強さは学生特有のパワーがあって侮れないとは思います。でも、そこはクラブが負けるわけにはいかないというところもあるので、一切気を抜かず、でも学生にリスペクトをもって戦っていこうと思っています。MISTRALの、…クラブチームの強さを見せつけることを体現したいと思っています」

※2 第12回(2021年開催)全学決勝戦は日本体育大学 対 同志社大学の戦いで、井田ほのか選手がいた同志社大学は9-7で負け、準優勝となりました。

「先手」のMISTRALかパワーの関西学院大学か

クラブチームの選手も通過してきた学生リーグ。その最終地点である全学優勝校・関西学院大学へのリスペクトを示しつつ、クラブチーム女王の強さも見せつけたいMISTRAL。先手のMISTRALが勝つのか、学生パワーの関学が勝つのか。真の日本一が決まる瞬間を国立競技場で一緒に見てみませんか。

会場へ足を運べない皆様にはライブ配信もありますので、そちらをご覧ください。