Interviewインタビュー

2025年11月24日(月祝)、「日清食品 presents 第16回ラクロス全日本大学選手権大会」男子準決勝 明治学院大学(関東リーグ戦1位) 対 名古屋大学(東海リーグ戦1位)が東京都品川区・大井ホッケー競技場メインピッチで行われ、4対5で名古屋大学が勝利し決勝へと駒を進めました。名古屋大学が決勝で対戦するのは早稲田大学(関東リーグ戦2位)です。
【スコア】
| 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | OT | total | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 明治学院大学 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | 4 |
| 名古屋大学 | 1 | 0 | 1 | 2 | 1 | 5 |
【得点者】
| 明治学院大学 | 名古屋大学 |
|---|---|
| #3 奥山廉汰郎 2点 | #7 前田賢蔵 2点 |
| #14 城戸口桜輝 1点 | #1 田口光成 1点 |
| #51 榎本祥大 1点 | #11 傍士陽輝 1点 |
| #12 室拓磨 1点 |
“前回大会準優勝”の明治学院 vs “打倒関東”の名古屋
「日清食品presents第16回ラクロス全日本大学選手権大会」(以下、全学)男子準決勝は、1回戦をサドンビクトリーで勝利した明治学院大学(以下、明学大)と、1回戦で北海道大学との勝負を制した名古屋大学(以下、名大)の戦い。前回大会準優勝の明学大か、打倒関東に燃える名大か、両者の意地がぶつかり合う。

1Q 名大#7前田選手の一発で先制
(本文中の得点は、HOME対AWAYの並びです)
試合は明学大ボールでスタート。開始早々、U20にも選出された明学大#3奥山廉汰郎選手の鋭いニアシュートがいきなり飛んできますが、名大ゴーリー#0松田涼平選手がファインセーブ。その後も明学大OF陣が幾度となくシュートを打ち続けますが、名大ゴーリー#0松田涼平選手がファインセーブを連発して得点を許しません。
ファインセーブを連発した名大#0松田涼平選手
開始11分、DFからリズムを作った名大はエキストラマンオフェンスの機会を得ると、ゴール裏から名大#7前田賢蔵選手がまくってシュート。これがゴールネットを揺らし、名大が先制に成功します。
その後も明学大がフェイスオフからオフェンスを作りますが得点できず、1Qは0-1で終了しました。
2Q 両ゴーリーが魅せるロースコアの攻防
2Qで最初のフェイスオフを制したのは名大。#1田口光成選手や#7前田賢蔵選手を中心として積極的にシュートを打ちますが、ここで存在感を示したのは明学大のゴーリー#50後藤渉吾選手。名大OF陣のシュートを冷静に弾き出し、チームを救うビッグセーブを連発します。

ここで名大側にアクシデントが起こります。チームの大黒柱でありオフェンスの核でもある#7前田賢蔵主将が負傷交代。それでも、名大ゴーリー#0松田涼平選手の落ち着いたセーブや、#81清水樹選手を中心としたDF陣が粘り強く対応し、名大の組織力の高さを見せます。明学大のエキストラマンオフェンスも無得点に抑え、スコアボードには「0-1」のまま時間だけが進んでいきます。
Q終盤、明学大もタイムアウトから組み立て直そうとしますが、名大DF陣がこれを許しません。名大にとっては追加点こそ奪えなかったものの、関東王者相手に1失点も許さない前半となりました。
3Q 名大#1田口選手の一撃でリードを2点に広げる
後半の立ち上がり、明学大は#14城戸口桜輝選手・#24赤毛丈真選手らがミドルレンジからのシュートでゴールを狙いますが、名大ゴーリー#0松田涼平選手の好守が後半も冴えわたります。枠外になったシュートも、バウンド気味の難しいボールも確実にセーブしてクロスにおさめ、明学大のOFの機会を奪います。
そんな中均衡を破ったのは、前半から名大OFを引っ張ってきた#1田口光成選手でした。
開始12分、ゴール裏で2対2の形からDFをずらして一気にゴール左に駆け上がります。わずかなスペースを見逃さずに放ったシュートがゴールへ吸い込まれ、スコアは0-2になります。

一方の明学大も#3奥山廉汰郎選手を中心にゴールを目指しますが、名大DF陣の前に得点できません。明学大0-2名大と、東海王者が一歩抜け出した形で第3Qを終えます。
4Q 明学大の4得点、残り2秒のドラマ
4Qに入ると関東王者が意地を見せます。フェイスオフを制した明学大は、#3奥山廉汰郎選手が高い位置からスタンディングシュートを突き刺し、この試合初得点。ついに明学大側のスコアボードに1点が刻まれます。
勢いづいた明学大はその後も攻撃の手を緩めません。開始11分、明学大#14城戸口桜輝選手が左サイドの薄い角度から上手く決めきり同点に追いつくと、続く開始12分、こぼれ球を明学大#51榎本祥大選手が押し込んでスコアを3-2とし一気に逆転します。
このまま明学大が逃げ切るかと思ったのも束の間、その後に名大フェイスオファー#12室拓磨選手がホッケー場の特性を活かしたバウンドシュートでゴールネットを揺らし3-3の同点とします。
一方の明学大も#3奥山廉汰郎選手が右横の1対1からシュートを放ち、この日2点目となる得点で再び逆転に成功します。終盤に来て試合が一気に動き、明学大の一挙4得点と名大の1得点でスコアは4-3。会場は大盛り上がりです。

ただ、残りの試合時間も30秒を切り、明学大が依然4-3と一歩リード。そして明学大が自陣でボールを持った状態。「このまま試合終了か」と誰もが思ったその時でした。
名大OF陣が文字通り”決死のライド”でボールを奪取。こぼれ球を拾った名大#11傍士陽輝選手がそのままシュートを決め、土壇場で同点とすると会場のボルテージはMAXに。

同点ゴールが決まったのは試合残り2秒。名大#7前田賢蔵主将が試合後インタビューで語った「1年間磨いてきたグラウンドボールとライドの意識」が、全学準決勝の土壇場で結実した瞬間でした。スコアは4-4。勝負の行方はサドンビクトリーへと委ねられます。
サドンビクトリー 主将が決めた、歴史を塗り替える決勝ゴール
サドンビクトリー開始後、意外にも決着はすぐに着きました。フェイスオフを制したのは名大#12室拓磨選手。自陣でしっかりとポゼッションを確保すると、ボールは#35小嵐駿亮選手へ。小嵐選手が1対1でDFを引きつけ、中へとパスを通します。
そのボールを受けたのは、名大#7前田賢蔵主将。スティックをコンパクトに一振りし、倒れこみながら決勝ゴールを突き刺しました。これが男子東海地区勢で歴史上初となる決勝進出の逆転弾となり、同時に試合終了のホイッスルが鳴り響きました。

最終スコアは4-5。名大がサドンビクトリーにもつれる激戦を制し、男子東海地区勢として初めて全日本大学選手権の決勝戦へ駒を進めました。
2025年11月24日 明治学院大学 対 名古屋大学の見逃し配信はこちら
「関東を倒す」長年の目標が現実になった一戦
試合後、決勝ゴールを決めた主将の#7前田賢蔵選手は率直な思いをこう語りました。
「準決勝で関東のチームに勝てたことが本当に嬉しいです。東海地区にとってずっと超えられない壁だった相手に、学生日本一をかけたステージで勝つことができた。地方でも関東のチームを倒せる、ということを証明できたかなと思います。」

前田主将がこの試合のポイントにあげたのは”追いかける展開になっても、すぐに追いつける粘り強さ”でした。
「4Qで逆転されたときも、観客の方々がアウェイなのに完全にホームのような雰囲気を作ってくれていたので、『1点取られても絶対に負けない』と思えました。ベンチからも『まだいける』『顔を上げよう』という声がずっと出ていました。その空気が最後のライドにつながったと思います。」
誰もがもう駄目だと思うような場面でも、名古屋大学は最後の最後まで諦めようとしなかった。これがこの試合を勝ち切れた要因となっています。
1年間やってきたことの集大成
前田主将は4Q残りわずかの場面で生まれた同点ゴールを「1年間やってきたことの集大成」だと表現します。
「この1年、ずっと『グラボとライド』をチームテーマに掲げてきました。最後の最後まで、1つのグラウンドボールと1つのライドを諦めないこと。あのラストプレーでチェックダウンして拾って#11の傍士が決めてくれたのは、まさに自分たちのラクロスが体現できた瞬間でした。」
さらに、この勝利は名古屋大学だけのものではないと強調します。
「東海地区はチーム数が少ないぶん、どの大学とも繋がりが深いです。合同練習や練習試合で一緒に汗を流してきた仲間の代表として戦っている感覚があります。だから、この勝利は名古屋大学だけのものではなくて東海地区でラクロスをしているみんなの勝利だと思っています。」
東海地区の絆が生んだ勝利。この一戦が名古屋大学だけではなく東海地区を背負った戦いであったことが前田主将の言葉から理解できます。
「地方でも日本一を目指せる」と示すために
前田主将は最後に決勝戦への意気込みをこう締めくくりました。
「歴史的な1勝と言ってもらえるかもしれませんが、僕たちのゴールはまだ先にあります。どのチームも『学生日本一』を目指してここまで来ていますし、自分たちもそうです。今日の勝利に満足することなく、東海代表として、そして日本中の地方チームを代表して、決勝で必ず勝ち切りたいです。」
地方から関東王者を破り、男子東海地区勢として初めて決勝の舞台に立つ名古屋大学。1年間積み上げてきた「グラウンドボールとライド」、そしてゴーリー#0松田涼平選手を中心としたディフェンスと個々の1対1の強さを武器に、いざ学生ラクロス界の頂点へ。
流れを渡さなかった守護神
この試合、名大DF陣の要となったのがゴーリー#0松田涼平選手です。均衡した時間帯に相手の決定機を次々と止め、4Qで明学に流れが傾きかけた場面でもチームを支えるセーブを見せ続けました。
自身のプレーを振り返り、まずあげたのは”流れを相手に渡さないセーブ”でした。
「点が動かない時間帯で、自分が1本止め切れるかどうかでチームの流れが変わると思っていました。特に3Qは0-1、0-2の局面でセーブし続けることができて、ディフェンス全体としても粘ることができたのかなと感じています。」

どんなピンチでも後ろには頼れる守護神がいる。松田選手が名大DF陣にもたらしている安心感は非常に大きいと感じます。
強さの源泉――分析ノートが支えたビッグセーブ
なぜこんなにもセーブ力が高いのでしょうか。
「今年は特にシューターの打ち方や体勢を見ることを大切にしてきました。相手がどういうモーションからどこを狙いやすいのかを自分のノートに書き溜めて分析しています。日頃の練習から、うちには良いシューターがたくさんいるので、その人たち相手に『見て・予測して・止める』を繰り返してきた成果だと思います。」
続けて、決勝に向けては「さらなる分析を重ねる」と前を向きます。
「残り1ヶ月で、相手のオフェンスの特徴やシューターの癖をしっかり分析して準備したいです。今日のように自分が止めることでチームに流れを呼び込めるようにしたいですね。」
名大DFを支えた守護神の背中は非常に頼もしく、次戦でも相手チームにとって大きな脅威になりそうです。
【決勝(東京会場)試合情報】
- 日時:2025年12月21日(日) 15:00 フェイスオフ
- 場所:スピアーズえどりくフィールド(江戸川陸上競技場)
- 対戦カード:名古屋大学(東海学生1位) vs 早稲田大学(関東学生2位)
- チケット発売ページ
- 配信ページ(作成中)
Photo by 日本ラクロス協会広報部 海藤秀満/日本学生ラクロス連盟東日本支部広報委員会
Text by 日本ラクロス協会広報部 小田悠人





