Columnコラム

【Behind the scenes-日清食品 presents 第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会-】KAWASAKI FALCONS~12連覇は足かせなのかアイデンティティなのか~

2025年12月13日に開催された日清食品 presents 第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会(以下、全クラ)決勝戦は3年連続KAWASAKI FALCONS(以下、FALCONS)対GRIZZLIESとなり、13-4でFALCONSが勝利、3大会ぶりにクラブの頂点に立ちました。全クラ決勝で敗退した2大会後のこの1年。FALCONSは何を思い、何を乗り越えてきたのか。主将#99梅原寛樹選手と#5佐野清選手にお聞きしました。

2021年の全クラ準優勝から始まる再生の道

喜びを噛み締める主将#99梅原寛樹選手。#28は3得点した奥村祐哉選手の背中

「連覇が止まったのは、僕が主将になった最初の年です」。

FALCONS(ファルコンズ)の#99梅原寛樹選手はそう振り返ります。

コロナ禍で特別大会となった翌2021年、全日本選手権(以下、全日)出場への道のりである全クラ決勝戦で、FALCONSはStealers(スティーラーズ)に6-8で敗け、連覇が止まりました。

なお、ここで言う「12連覇」とは全クラではなく全日での優勝を指します(「全クラ・全日の優勝チーム表」参照)。

「最初は 自分が(連覇を)終わらせたことで、めちゃくちゃ責任を感じて、とても落ち込みました。いろんなOBや先輩方に、連覇を止めてごめんなさい、みたいな感じでいろいろ話すなかで、ある先輩から 『連覇はどうでもよくて、毎年毎年自分たちがやるべきことを積み重ねていくってことが一番大事だから、また来年、自分たちが上手くなればいいだけだよ』って言っていただきました。確かにそうだなっていうのが 自分の中にできて、そこでうまく切り替えることができました」。

翌2022年にFALCONSは王者奪還をしたものの、2023年と2024年は新勢力GRIZZLIESの台頭により、クラブ2位の座に甘んじることになります。

FALCONS 全クラ 全日 備考
2004年度 6 VALENTIA 15 VALENTIA FALCONS創設
2005年度 7 DESAFIO 16 DESAFIO
2006年度 8 VALENTIA 17 VALENTIA
2007年度 9 VALENTIA 18 VALENTIA
2008年度 10 FALCONS 19 FALCONS
2009年度 11 VALENTIA 20 FALCONS 大学選手権大会が初開催
2010年度 12 VALENTIA 21 FALCONS
2011年度 13 FALCONS 22 FALCONS
2012年度 14 FALCONS 23 FALCONS
2013年度 15 FALCONS 24 FALCONS
2014年度 16 FALCONS 25 FALCONS
2015年度 17 FALCONS 26 FALCONS
2016年度 18 FALCONS 27 FALCONS
2017年度 19 FALCONS 28 FALCONS
2018年度 20 FALCONS 29 FALCONS
2019年度 21 FALCONS 30 FALCONS 全日がワンマッチへ
FALCONS 12連覇達成
2020年度 コロナ禍により特別大会
2021年度 22 Stealers 31 慶應義塾大学
2022年度 23 FALCONS 32 FALCONS
2023年度 24 GRIZZLIES 33 GRIZZLIES 全日が「A1」へ
2024年度 25 GRIZZLIES 34 GRIZZLIES
2025年度 26 FALCONS 35 FALCONS KAWASAKI FALCONSへ名称変更

全クラ・全日の優勝チーム表

世界に通用する選手になる

FALCONSの連覇がStealersに負けたことで止まった同(2021)年にGRIZZLIES(グリズリーズ)が東日本チャンピオンリーグに誕生します。GRIZZLIESは、元FALCONSの選手たちが中心となり立ち上げました。

梅原選手は、GRIZZLIESに勝てなかった2年間をこう振り返ります。

「チームとして目指すところが 『日本一』だったり、目標が日本代表になるだったり、日本代表でやっていることを自分たちのチームでもやるだったり、GRIZZLIESと似たようなことをしているなかで、GRIZZLIESと比べてFALCONSは個体差で負けたっていうのが要因としてはあったのかなと思っています」。

日本一を目指すチームと同じことをして負けが続き、FALCONSの隆盛が過去のものとなる可能性だってあった2年後の2025年、それを食い止めたのはヘッドコーチ平田基樹さんの招聘(しょうへい)でした。

「平田さんは、FALCONS創設メンバーの一人です。平田さんから、当時(2004年)のFALCONSは、日本一じゃなくて、世界に向けて自分たちがどれだけ活躍できるのか、どれだけ世界に通用する人間になるかというのを追い求めていた、という話をしていただきました。

日本一を獲ることはもちろんですが、今年のチーム目標を『世界に通用する選手』にしたことで、 個人のレベルアップにかなり注力してきました。日本一を目指すなかで、『世界』へと目線を変えたことが勝てた要因じゃないかなと思っています」。

月曜日も練習

全クラ決勝戦での梅原選手

個人のレベルアップのために、土日の練習に加え、月曜日の夜も練習日としたと言います。

「2時間弱ですが、主に個人技術をアップさせる場として確保しました。仕事があったりするので全員が参加できる訳ではないですが、参加できる人は参加していました。継続的に参加していたメンバーは、本人が自覚できるほど個人技術が上がっていきました」。

ヘッドコーチという第三者の目線

梅原選手が入部した2018年から2024年まで、FALCONSにはコーチという存在がいませんでした。コーチが欲しいという話は、昨年(2024年)、梅原選手など上の世代から挙がっていたと言います。

「今年、選手側から声をかけて、平田さんにコーチをお願いしたのですが、多分、平田さんは絶対言わないんですけど、引き受けてくださったのは、今のFALCONSを見ていられなかったからだと思います」。

コロナ禍が明けたころから、平田さんはラクロス自体から離れていたそうです。

「コーチがいなかったときは、(判断基準が)自分が 上手くいっているか・いっていないかだけだったんですけど、コーチが毎回練習にいて、第三者目線から見てもらえるようになってからは、何が良くて・悪くて、どう良かった・悪かったのかというような区別をつけられるようになりました。

あと、選手の起用や戦術は、去年までは主将である自分とリーダー陣でやっていたんですけど、今年はコーチに全てお任せました」

ヘッドコーチが出場選手を決めたり戦術を考えるなかで、これまで出場できていた選手が出られなくなったり、これまで上手くいっていたはずの戦術を使わなくなったり、変化が起こることで反発もあったのではないでしょうか。

「最初はあったと思います。でも、出場機会が減ったことをコーチの有無のせいにするんじゃなくて、自分の単純な実力不足だというところをみんな感じて、それでより練習に取り組むようになっていったというのはあると思います」。

「連覇をしなきゃいけない」に縛られていた

世界に届け、日本一(全クラ決勝戦)

今年は世界へと 目線を上げ「世界に通用する選手」になるよう取り組んだということですが、日本代表(経験者含む)を多く抱えているのであれば、FALCONSはもともと世界を見ていたのではと思ってしまいます。

「今までは、連覇が続くことによる連覇をしなきゃいけないっていうことに縛られていて、世界を見ることができてなかったんですよ。今年、平田さんがヘッドコーチとして来てくださり、目指すところは 国内の優勝じゃなくて、世界で戦える選手を多く輩出することだとなって、それで世界を見ることができるようになりました」。

FALCONSの目指す「世界」

FALCONSの言う「世界」とはどこを指すのでしょうか。

「FALCONSが 今年取り組んだのは、個人個人のレベルを上げることでした。個人個人のレベルが上がれば、日本代表選手として世界大会に出ることができると思うんです。ただ、僕たちは世界大会に出ることが最終目標ではなく、その先のアメリカやカナダといった世界ランキングでトップチームとちゃんと戦い合えるような人材になるところにあると思っています」。

日本ラクロスの在り方を変える

「日本のラクロス」という大きな枠組みは、日本代表が作っていくものだと思っていましたが、梅原選手の話を聞いていると、FALCONSという一クラブチームが「日本のラクロス」のあり方を変えていこうとしているのかなと思えます。

「確かに、それに近いかもしれないですね。FALCONSが目指す『世界に通用する選手』と日本代表選手として求められるものとでは違うところがあるので、日本代表では試合に出ているのに、FALCONSでは出ることができない選手がいますし、その逆もあります」。

FALCONSでやっていることが、そのまま日本代表活動で活かされるものではないと理解しつつも、FALCONSが思う『世界に通用する選手』像にこだわりつづけるには理由がありました。

「FALCONSの選手も日本代表に選ばれることを目標としているし、日本代表として世界と戦うというところは目指しています。今年、FALCONSが世界に目を向けたのと同時に、一人ひとりの能力を上げることに注力しました。一人ひとりの能力が上がって、FALCONSから日本代表選手が輩出され、その選手がFALCONSとしてやってきたラクロスを日本代表のなかで体現すれば、日本のラクロスのレベルは勝手に上がると思っているんです」。

FALCONSの目指す「個人のレベルアップ」が、世界の強豪と戦うときに効いてくるはずだという考えです。

FALCONSの勝利は、世界のなかにある「日本のラクロス」を変えることに繋がっていくのです。

この一年、自分たちがやってきたことが正しかったことを証明する一戦

#5佐野清選手(全クラ決勝戦)

ここからは、#5佐野清選手に全クラ決勝戦についてお話を伺います。

「(2025年の全クラ決勝戦は)自分たちが1年間やってきたことが正しかったことを証明する一戦でもあり、これからの日本代表に影響を与える一戦にもなると思っています」。

全クラ決勝戦の2週間前、佐野選手はこれから始まる一戦への意味をそう語りました。

全クラ1回戦に出場し敗退していった北海道・東海・関西・中四国/九州といった4支部代表チームが見上げる高い壁、その一つがFALCONSでした。日本代表選手を多く抱え、多くのチームが目指す頂点であり、目指したとて到底たどり着けずにいる場所であるというのに、佐野選手は試合を前に「不安」を口にします。その「不安」の正体とは一体なんなのでしょうか。

「全クラ決勝戦でFALCONSが勝ちたいと思うのは、日本ラクロスの価値観をアップグレードさせたいからです。日本がホーデノショーニーやオーストラリアのラインを越えるためにはブレイクスルーが必要だと思っていて、FALCONSが勝つことが、そのブレイクスルーの引き金になると思っています。FALCONSが勝ってうれしいという話ではないんです」。

FALCONSの看板を背負い、日本のラクロスを変えていく#5佐野選手

「12連覇」という数字

結果は先述の通り、13-4でFALCONSが勝利し、3大会ぶりの優勝を果たしました。

試合後、佐野選手は「安堵」を口にしました。

FALCONSが12連覇を成し遂げた2019年、佐野選手はまだ東北大学在籍中でした。

大学院を卒業した2021年は誕生したばかりのGRIZZLIESに入部し、FALCONSの敗退をチーム外から見ていました。

佐野選手はよく「12連覇」という言葉を口にします。12連覇のときも、連覇が止まったときもFALCONSの外にいたにも拘わらずです。

「僕がラクロスを始めたのが2017年(東北大学1年生)で、FALCONSがまさに10連覇したときだったんです。だから、学生の目から見てFALCONSは 圧倒的な存在でした」。

2021年にGRIZZLIESに入部したのは、その圧倒的な存在への対抗心から。そして、2022年にFALCONSへ移籍をしたのは、その圧倒的な存在の中心に自分がいたいと思ったから。

「FALCONSが負けた翌年、負けてしまったFALCONSをもう一度日本一にするんだみたいな、 自分がそこの中心になるんだみたいな思いがありました。これまでFALCONSで活躍されてきた#4畠山昂太(はたけやま こうた)さんや#90関根幹祐(せきね みきすけ)さんといった世代(30代後半~40代前半)から、僕らの世代(20代)へ『日本のラクロス』を引っ張っていく役割をバトンタッチされることが使命だという思いがありました」。

FALCONSの「12連覇」が日本ラクロスに与える影響は、その時期にFALCONSに在籍している・していないは関係ないと佐野選手は言います。

「FALCONSという看板を背負っている以上は、日本のラクロスからFALCONSは強いという目で見られます。 強くあり続けなきゃいけないみたいなプライドは(12連覇のときにまだ所属していなかったとしても)あると思うんです。

そういう意味では、自分が失ったものを取り戻すというよりは、 先人たちが築き上げてくれた価値みたいなのを、よりよくもっと高いものにしていきたいと思いがあります。その価値に対して敬意を払わなきゃいけないと思っているから、(過去の12連覇は自分にとっても) やっぱり重いっていうことです。

僕としては、FALCONSの選手である以上、日本のトップを走り続けなければならない使命があると思っています。今回の全クラ優勝により、トップを取り返せたんだと思って安堵したというところですね」。

日本のトップチームとして引き継がれるべき魂

佐野選手が入部した2022年から2024年まで、FALCONSにはコーチがいませんでした。ヘッドコーチとして平田さんが入られてからの1年と、これまでの3年間とで変わったことはなんでしょうか。

「平田ヘッドコーチは、『FALCONSとは何たるべきか』というのを大事にしてらっしゃって、 それはどういうラクロスによって表現されるかみたいなところも含めてアプローチしてくださり、世界に向けて戦える人材を作っていく過程の中に『日本一』があるというところを再認識することができました。共通認識できた状態でシーズンを始められたっていうところが結構大きかったなって思っています。

#90関根さんを見ていても思うのですが、FALCONSはただラクロスが上手い選手の集団じゃなくて、『何を成し遂げないといけないチームか』というところが12連覇していたときのFALCONSにはきっとあったんだろうなって思います。引退されて人が入れ替わっていく中でも、 変わらないものがこのチームにはなきゃいけないと思っていて、今回の一勝は引き継がれるべきものの礎になると思っています」。

全クラ決勝戦で5得点を上げた#22鈴木潤一選手もFALCONSと日本代表を引っ張って来た一人

これは新しい歴史ではないか?

新勢力GRIZZLIESの台頭で、頂上から消えゆく歴史を辿る可能性だってあったFALCONS。佐野選手を始め、それを食い止める若い選手たちがいたことこそが新しい歴史、新しい日本のラクロスではないかと思ってしまいます。

「それだけやっぱり12連覇というのは輝かしいんじゃないですかね。2014年や2018年の日本代表にはFALCONSの選手がたくさんいて、その存在感をすごく感じていました。

どうしてそこまでのものを生み出すことができたんだろうっていうのが、 僕は一番興味があったんです。4年に1度の世界選手権に3大会連続で出るくらい情熱があって、世界の舞台で戦った人がどういう経験をしてきて、 それがどういう風にチームに反映されているんだ、というところがすごい興味の対象でした。そういうのを学ぶことが、自分が世界に出る時に必要だと思っていたんで、 それも込みでFALCONSでプレーしているというところはあります」。

梅原選手の話を聞いていても、佐野選手の話を聞いていても、FALCONSの全クラ優勝と日本のラクロスのレベルアップは切っても切り離せないものだということが感じ取られます。

FALCONSは、このあとの2026年2月1日に開催された「日清食品 presents 第35回ラクロス全日本選手権大会 A1」でも学生王者の早稲田大学に10-4で勝利し、真の日本一に返り咲きました。

この全クラでの1勝を、2027年に東京で開催される世界選手権大会の日本代表に繋げたいと強く思う選手たちが「日本のラクロス」のなかにいるという事実が、日本のラクロスを変えていくのだと思えます。

【プロフィール】

名前:梅原 寛樹(うめはら ともき)

背番号:99 MF 主将

出身大学:2018年3月 日本体育大学卒業

クラブチーム選手歴:

2018年~現在 KAWASAKI FALCONS

日本代表歴:

2017年 22歳以下男子日本代表/APLU アジアパシフィック選手権大会

2018年 男子日本代表/FIL 男子世界選手権大会

2022年 SIXES男子日本代表/THE WORLD GAMES 2022

2023年 男子日本代表/World Lacrosse 世界選手権大会

2024年 ラクロスBox男子日本代表/World Lacrosse BOX 世界選手権大会


名前:佐野 清(さの きよし)

背番号:5 DF

出身大学:2020年3月 東北大学卒業

クラブチーム選手歴:

2021年 GRIZZLIES

2022年~現在 KAWASAKI FALCONS

日本代表歴:

2022年 SIXES男子日本代表/THE WORLD GAMES 2022

2023年 男子日本代表/World Lacrosse 世界選手権大会

Photo by 日本ラクロス協会広報部 海藤秀満・小保方智行

Text by 日本ラクロス協会広報部 岡村由紀子

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