Columnコラム

【The Journey Begins Here ―新入生勧誘から育成、そして世界へ― 】学び合い、鼓舞し合う──上島健司さんが語る、ラクロス強化の「指導者の力」(全3回)

コロナ禍を経て途切れたラクロス文化を伝えようと、2022年11月に次の入学式に向けて第1回全国FPJ会議が開催されました。時を同じくして2023年3月に「あかつきカップ(※)」が「ラクロス全日本学生新人選手権大会」と全国大会へ生まれ変わりました。そこから4年が経ち、新入生勧誘や育成、強化はどう変わり、世界大会へ出場する日本代表にどう繋がっていくのかを3回に分けてお送りします。

(※)前身である『あかつきカップ』は、学連中四国地区の発案により「全国の新人戦優勝、あるいはそれに準じたチームで競い合いながら、交流ができる場を創ろう。」と2016年にスタートしました。
その『あかつきカップ』が、大会コンセプトは引き継ぎつつ、全日本選手権・大学選手権・クラブ選手権に次ぐ、「4つ目の全国大会」に生まれ変わりました。

第2回 強化部長 上島健司さん

4月に新入生が入部したあとの「育成」「強化」はどのようになされていくのでしょうか。2025年11月から公益社団法人日本ラクロス協会(以下、JLA)強化部長に就任した上島健司さんに新人の「育成」とその先にある「強化」について伺いました。

📖 第1回FPJの取り組みはこちらから
【The Journey Begins Here ―新入生勧誘から育成、そして世界へ― 】轟け、震わせろ──中島優人さんが語る、ラクロスの「共鳴する力」(全3回)

新人「育成」期間が3ヶ月伸びた

2026年3月開催のあかつきカップの様子

JLAには、新人育成の成果を競う大会として、各地区で開催されるサマーステージ(以下、サマー)とウインターステージ(以下、ウインター)があります。

4年前までは、12月に開催されるウインターが終われば、育成期間も終わるという認識でしたが、2023年3月にあかつきカップが開催されるようになってからは、育成期間の認識は3ヶ月伸びたのではないでしょうか。この3ヶ月伸びたことが、育成・強化にどう影響を与えているのか上島さんにお聞きしました。

「それが、第1回から3回までのあかつきカップ開催時、自分はまだ関東強化部次長(男子競技)で、あかつきカップの現地へ行ったのは今回が初めてなんです。なので、あかつきカップ前後での育成の違いはわかってないのが正直なところです」。

📖 【参考】第1回あかつきカップ開催 (2023年3月)時の前強化部長・佐藤壮さんによるコメント
機関誌「ラクロスマガジンジャパン」(2022-2023)p.22

強化部が考える新人育成とは

では、強化部の考える新人育成とはどのようなものでしょうか。

「今時点では、『ユース活動』がそれに当たると思います。各地区の優秀な選手や伸びシロのある選手を集めて直接強化する活動です。

一方、『あかつきカップ』は、チーム単位で出場する大会で、チーム内での育成の話になるので、アプローチ方法は少し異なってくると思っています」。

強化部がFPJと手をつなぐということはある?

あかつきカップを新人育成のゴールと捉えるとするならば、その入口であるFPJについて、強化部はどう見ておられるのでしょうか。互いに手を組むということはあるのでしょうか。

「競技人口を増やすという意味においても、FPJとの連携はとても重要だと思っています。

強化部長に着任してから、FPJ全国会議に出させていただきました。各地区の課題を聞くことで、FPJのモチベートになるような手伝いをしていきたいと思いました」。

FPJ全国会議に参加し、各地区の新入生勧誘(以下、新勧)状況を聞いて強化部として何をするべきと思われましたか。

「コロナ禍で減少した入部者数を取り戻すという課題はほぼクリアになり、再構築に向けて活発に動き出していることが感じられました。そこはすごくポジティブでした。

更に盛り上げていくには、各地区の事務局長や指導者・様々なステークホルダーに新人獲得の重要性を更に理解してもらい、巻き込む必要があると思いました」。

新勧への「指導者」の関わり方ってなんだ?

まだまだFPJにオトナを巻き込めていない、と感じられたのでしょうか。

「巻き込めていないとまでは思わないですが、学生だけでは、その年ごとの成果にどうしてもブレが出てしまうこともあるとは思います。

なので、新勧に指導者も当然関わるべきだと思っています。私は指導者の皆さんに対して『新勧のマネジメントをすべき』と言いたいのではなく、『指導者も新勧を他人事にせず、学生と一緒の目線で考えてあげてほしい・試合や練習と同じように鼓舞したり、支援したりして欲しい』と思っています。

例えば、そもそも各大学の入学者数が違うのだから、ライバルチームと同じぐらい頑張ればいいのか、違うことをやらなきゃいけないのか、どこにパワーをかけるべきか等は社会人の方が経験を生かすべきです。学生と一緒に作戦を練って、新人獲得≒強化につなげてほしいということは、各地区の指導者の皆さんにも啓蒙していこうと思っています」。

あかつきカップの後の「強化」

2026年3月開催のあかつきカップの様子

あかつきカップに話を戻すと、2026年3月に卒業した学年が、あかつきカップが全国大会となった最初の1年生でした。彼らが4年生になったときのリーグ戦が、あかつきカップのときの成績と必ずしもリンクしていないと感じたんですが、上島さんは育成後のリーグ戦に向けての「強化」についてどうお考えでしょうか。

「ラクロスは、日本では多くの方が大学1年生から始めるスポーツなので、新人である1年間とリーグ戦を含む4年間との成長度合いは、各地区や各チーム、あと体制ごとに変わるんだろうなと思います。

4年間を通して成果を出そうとしているチームもあれば、1年生のところでブーストかけるチームもあると思います。そこは各チームの戦略だと思います。

強化部の考える『強化』となると、今時点では、ユース活動において2年生、3年生のタイミングでもアプローチをすることだと思っています」。

ユース活動の目指すところ

あかつきカップから一度切り離してお聞きします。そもそもユース活動はどこを目指して活動しているのでしょうか。

「強化部の目的は『各地区のリーグ戦の活性化』です。そういった意味だと各地区で、より多くのチームに上手い選手がいる試合が多く実施される方が、より競技性は上がるよねというところを狙ってやっています。

各地区の強化部次長が男女ともいらっしゃり、その方たちが推進してくださっています。

ユース活動をどういうコンセプトで考えているかで違いがありますが、関東地区 (男子競技)で言うと、『次の日本代表を作っていく』というコンセプトに加えて、『日本ラクロスを支える人材を作っていく』というスタッフも含めた人材育成までアプローチしています。

ユース活動については、同じ強化部でも地区によって力の入れ具合に差があるのが実情です。

指導者がユース活動にどこまで時間を掛けられるか、練習に集まりやすい環境なのかといったユース自体のプレゼンスの違いがあるのです。

関東地区(男子競技)を例に挙げると、ユースの練習では学べることが多いからといって自分たちのチームよりもユースの練習を優先するのですが、地区によっては、ユース練習よりチームを優先する・優先せざるを得ない状況もあります」。

地区によってユース活動に差があるということですが、今後強化部として、その差をなくし、全国的に一定のレベルに揃えることは考えておられるのでしょうか。

「私はこれまで関東地区の男子だけを見ていたので、強化部長就任後、全地区を回って男女ともの状況を教えてもらっているところです。各地区の特性に応じて、何を目指していくかは、各地区強化部と話していく必要があると思っています。どの地区も環境や文化が異なりますから、強化方法も区々だと思います」。

関東にいなければ日本代表になれないのか

地区によってユース活動に差があるように、日本代表選手にも地区による差があると感じているのですが、関東地区の選手・スタッフが多くなるのは地理的に致し方ないことなのでしょうか。

「日本経済と一緒で、リソースや人、物、お金が集まりやすいのはどうしても関東になります。人口が多いとラクロスをする環境が整いますので、日本代表選手が多くなることは自然かと思います。

ただ個人的に思っているのは、それを覆すような各地区の切磋琢磨や台頭があると、国内ラクロスはより盛り上がるだろうなということです。簡単ではありませんが、各地区がより高いレベルになっていく、各地区のなかで競技性が更に高い試合を実現することが肝要かと思います。

競技性を上げるためには、ラクロスを始めた時の初心を忘れず、地区内でのナンバーワンを目指すのではなく、シンプルにラクロスが上手くなることを目指すことが必要だと思います。環境に捉われず、『アメリカの選手みたいなプレーがしたい』とか、『プロ選手と戦いたい』という視座を置いてラクロスに取り組むと、自ずと日本代表を目指せるようになるんじゃないかなと思います」。

日本代表への道のりの第一歩を感じられるのがユース活動

2025年11月に強化部長に就任され、こういったことに取り組んでいきたいという意気込みなどをお教えください。

「強化部で標準的に行うことは大きく3点です。

1点目は、ユース活動です。

日本代表のフィジカルやスキルが世界的にも着実にレベルアップしており、大学生が日本代表に入るというのは、数年前よりもハードルが高くイメージしづらいかもしれません。

その点ユース活動は、各大学・各地区の同世代の上手い選手と触れ合うことから始まり、世代によってはU20や海外遠征等で世界との差を感じたりと、日本代表を目指すための基礎となる経験が積めたりするので、非常に重要だと思います。

ユース活動を経験することで、選手やスタッフに日本代表や世界大会へ向けての新しい気づきを提供し続けたいです。

2点目は、学生からクラブチームに行く人の人口を増やしていく活動です。

A1 ALL-STAR GAMES(読み:エーワンオールスターゲームズ。全国学生オールスターvs全国クラブオールスター)や各地区で行っているオールスターは重要な取組です。

『こんなチームがあるならやってみよう、やっぱりラクロス面白いな』等

卒業後に転勤などがあっても、ラクロスを続けてみようと思えるきっかけを提供していきたいです。

3点目が、指導者同士の活性化です」。

指導者同士の活性化が日本ラクロス強化の鍵となる

上島さんは、何よりも指導者同士の活性化を図りたいと言います。

「やはり指導者自身が学べる場が必要だと思っています。指導者自身がより充実したり、レベルアップしたりしていくと各地区の強化も間違いなく図られると思います。

指導者同士が学び合ったり、指摘し合ったり、意見交換し合ったりできたらいいなと思っています。指導者同士の集まる場みたいなものは積極的に各地区でもやっていきたいなと思っています」。

【プロフィール】

上島 健司(うえしま けんじ)

選手歴

2009年 立教大学卒業
2009~2010年 SpaceTravelerS
2011~2013年 Stealers

コーチ歴

2010年 北海道大学男子ラクロス部HC/北海道ユース男子AC
2014年 立教大学男子ラクロス部HC
2023年 関東ユース男子GM
2025年 SIXES R&D Squad 女子TC

強化部

2021年 関東強化部次長(男子競技)
2025年 JLA強化部長(関東強化部次長と兼任)

Photo by 日本ラクロス協会広報部 小保方智行
Text by 日本ラクロス協会広報部 岡村由紀子

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