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日清食品presents第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会 決勝戦レポート ~「世界」へと目線を上げたKAWASAKI FALCONSの勝利~

日清食品presents第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会 決勝戦レポート ~「世界」へと目線を上げたKAWASAKI FALCONSの勝利~

2025年12月13日(土)、「日清食品 presents 第26回ラクロス全日本クラブ選手権大会」決勝戦GRIZZLIES(グリズリーズ・東日本1位)対KAWASAKI FALCONS(カワサキ ファルコンズ・東日本2位)が東京都品川区・大井ホッケー競技場メインピッチで行われ、4対13でKAWASAKI FALCONSが3大会ぶり12回目の優勝をし、「日清食品 presents 第35回ラクロス全日本選手権大会(以下、A1(エーワン))」へ進出することになりました。KAWASAKI FALCONSがA1で対戦するのは「日清食品 presents 第16回ラクロス全日本大学選手権大会」で優勝した早稲田大学です。
チーム名 1Q 2Q 3Q 4Q 合計
GRIZZLIES 1 1 0 2 4
KAWASAKI FALCONS 2 5 4 2 13
チーム 背番号・選手名 得点数
GRIZZLIES #11 金谷 洸希 2
#16 箱崎 蒼太 1
#45 金山 暖 1
KAWASAKI FALCONS #9 守田 樹 1
#28 奥村 祐哉 3
#17 黒田 健志郎 1
#14 吉田 健生 1
#22 鈴木 潤一 5
#0 小野 紘輝 1
#6 阿萬野 慎介 1

どちらの「日本ラクロス」が勝利をもたらしたのか

昨年の王者GRIZZLIESは「世界で勝つための環境を日本で作る」(主将#11金谷洸希選手)ことをチームの存在意義とし、対する挑戦者KAWASAKI FALCONS(以下、FALCONS)は、「個人の能力を上げ、世界に通用する人間になる」(主将#99梅原寛樹選手)ことをチームのヴィジョンとして掲げています。両者とも「日本一」だけではない、目線が「世界」にあるチームです。どちらの「日本ラクロス」が勝利と結びついたのか。試合を振り返ってみます。

1Q はFALCONS#28奥村祐哉選手が2得点

(本文中の得点は、HOME対AWAYの並びです)

1Q開始のフェイスオフ(以下、FO)は、GRIZZLIES#14吉原虹弥選手とFALCONS#24田村統馬選手とで行われ、GRIZZLIES#15松本友佑選手がグラウンドボールをスクープし、GRIZZLIESの攻撃からスタートします。

GRIZZLIESのパスミスによりFALCONSボールとなると、開始2分、FALCONS#28奥村祐哉選手がディフェンスの激しいコンタクトを受けながらもボールをキープし1on1、最後は角度のないところからのダイビングシュートで0-1と先制とします。

続く開始8分、FALCONS#28奥村選手がグランドボールをスクープすると、激しいディフェンスにも耐え走り込み、転びながらもシュート。本日2得点目を上げ0-2へ。

#28奥村選手のどちらの得点シーンにも、FALCONSがこの一年力を入れてきた「個人技術のレベルアップ」の成果が表れています。

この#28奥村選手に対するGRIZZLIESの激しいディフェンスに対してイエローフラッグが投げられており、GRIZZLIESが1分間のマンダウンディフェンスとなります。

FALCONSは一人多い状況を活かそうと、大きくパス回しを続けFALCONS#9守田樹選手がシュートを撃ちますが、GRIZZLIES#3大嶋省吾選手がセーブし、その間にマンダウンは解除されます。

残り2分半、ゴーリーセーブからクリアとなったボールをGRIZZLIES主将#11金谷洸希選手が走り込んで決め1-2としたところで1Qは終了します。

 

3得点したFALCONS#28奥村祐哉選手

2Q 、FALCONSが5得点を上げる

2Q最初のFOもGRIZZLIES#14吉原選手とFALCONS#24田村統馬選手で行われ、FALCONS#24田村選手が自分で取り攻撃がスタートします。

開始3分、FALCONS #22鈴木潤一選手からのパスを#14吉田健生選手がキャッチすると、クイックシュートで得点し1-3へ。2Qの先制もFALCONSです。

開始6分、FALCONS#9守田選手が1on1で放ったシュートが枠外へ外れると、そのボールを#22鈴木選手がチェイス。#22鈴木選手はGRIZZLIES#19廣津泰雅選手のタイトなディフェンスをもろともせずゴール裏からの1on1でシュートを放ち得点、1-4へ。

続く8分には、GRIZZLIESがクリアミスしたボールをFALCONSがスクープし、パスを受けたFALCONS#22鈴木選手がセンターラインから一人で走り込みシュート。本日2得点目を上げ1-5へ。

「ここが本当のターニングポイントだった」

FALCONSディフェンス#5佐野清選手がそう振り返るように、1Qから続くFALCONSの流れをこの試合全体のものにする決定的な瞬間でもありました。

FALCONS前半2回目のチームタイムアウト後の残り3分半。FALCONS#9守田選手がゴール裏でディフェンスを引き付けると、ゴールエリアラインにいる#28奥村選手へ大きいパスを出し、パスを受けた#28奥村選手がスティックを振りかぶりジャンピングシュートをします。これが決まり本日3点目で1-6へ。

FALCONSのパス展開の速さで会場を沸かせるシーンもありました。FALCONS主将#99梅原寛樹選手がゴールエリアラインから1on1を仕掛けると見せかけて、ゴール前にいる#91大庭成浩選手へパス。#91大庭選手がクイックシュートという流れは、FALCONSベテラン勢ならではのコンビネーションで、得点とはならずとも胸躍るシーンでした。

続く攻撃は、FALCONS#14吉田選手のゴール裏から1on1が、GRIZZLIES#19廣津選手のタイトなディフェンスに阻まれた残り30秒。FALCONS#14吉田選手がゴールエリアラインにいる#6阿萬野慎介選手へ大きくパスを出します。#6阿萬野選手はキャッチすると、振りかぶってシュート。1-7へと点差を広げます。

残り25秒、GRIZZLIESが反撃します。GRIZZLIES#10小松勇斗選手が放ったシュートを、FALCONSゴーリー#15徳舛宗哉選手が止め、弾いたボールを自ら追いかけます。チェイスで競り勝ったのは、GRIZZLIESオフェンス#21後藤選手。リスタートの笛と同時にGRIZZLIES#21後藤選手がゴール前にいる#16箱崎蒼太選手へパス。#16箱崎選手がキャッチすると、FALCONSゴーリー#15徳舛選手が戻り切れていないゴールへ落ち着いて決め2-7へ。

GRIZZLIESの反撃はここまで。FALCONSが5得点を上げて2Q終了します。

 

5得点したFALCONS#22鈴木潤一選手

3Q、交代したFALCONSゴーリー#30伊藤駿選手が無失点に抑える

GRIZZLIESとしては前半の悪い流れを断切るべく、得点を重ねていきたい 3Q。最初のFOはGRIZZLIESポゼッションで始まるも、後半に交代したFALCONSゴーリー#30伊藤駿選手のセーブが得点を許しません。FALCONSゴーリー#30伊藤選手がセーブしたボールを自ら運びオフェンスへ繋げると、開始4分でFALCONS#9守田樹選手が#13石村嶺選手からのアシストを受けシュート。3QもFALCONSが先制し2-8とします。

2本目のFOでGRIZZLIESポゼッションとなるも、FALCONSゴーリー#30伊藤選手のセーブでクリアへ。このクリアから開始7分にゴール裏からのパスを受けた#0小野紘輝選手が得点、2-9とFALCONSのリードを広げます。

FALCONSオフェンスのファールでマンダウンとなるも、またもFALCONSゴーリー#30伊藤選手のセーブによりクリアへ。開始11分、このクリアからの流れでFALCONS#22鈴木選手が本日3得点目を決め2-10へ。

4本目のFOでFALCONSフェイスオファー#24田村が自らスクープすると、FALCONSがチームタイムアウトを取ります。タイムアウト後、FALCONSボールでリスタートすると、残り2分でFALCONS#17黒田選手が#99梅原選手からパスを受け得点。2-11とし、FALCONSは3Qをゴーリー#30伊藤選手の活躍で無失点で抑え、9点リードで終了します。

 

セーブが光るFALCONSゴーリー#30伊藤駿選手

4QにGRIZZLIESが追い上げるも4-13でFALCONS勝利

4Q、GRIZZLIESはゴーリー#23福島裕樹選手もゴールから出てディフェンスし、FALCONSにシュートを撃たせない守りに変えてきます。

その結果が出たのが開始1分半。攻めあぐねたFALCONSオフェンスのファールによりGRIZZLIESボールへ変わると、逆サイドにいるGRIZZLIES#11金谷選手へパス。パスを受けた#11金谷選手がランニングシュートで本日2得点目を上げ3-11へ。

開始3分、引き続きプレッシャーをかけていくGRIZZLIESディフェンスに対しFALCONS#22鈴木選手がゴール裏で2枚付いたディフェンスを抜き、1on1を仕掛けると、ゴーリーのいないゴールへシュート。本日4得点目で3-12とします。

その後もGRIZZLIESのゴーリーを含めたディフェンスは続き、FALCONSオフェンスはゴールへ近づくことができません。近づけないのであれば、とFALCONS#17黒田選手は遠くからゴーリーのいないゴールへ向けてシュートを放ちますが、惜しくもボールはポストに当たり跳ね返ります。

両者ディフェンスの堅い守りにより得点が動かなかった残り3分、GRIZZLIESゴールにディフェンスが入るのかゴーリーが入るのか定まらない状況を見計らったFALCONS#22鈴木選手がゴール裏からの1on1でシュート。ボールはネットを揺らし5得点目を上げ3-13へ。

残り20秒、GRIZZLIESも意地を見せます。GRIZZLIESディフェンスの#45金山暖選手がボールラインを上げると、ゴールエリアラインからロングスティックを振り下ろしシュートを放ちます。高い打点からのバウンドは、これまで何度もFALCONSゴールを守って来た#30伊藤選手でも止めることができません。4-13としますが、GRIZZLIESの反撃はここまで。無情にもホイッスルが鳴り試合終了。4-13でFALCONSが勝利しました。

2025年12月13日GRIZZLIES対KAWASAKI FALCONS見逃し配信はこちら (rtv)

FALCONSの勝利にゴーリーのセーブあり!

 

クリアをつなげる#30伊藤駿選手

FALCONSオフェンスは、1Qで#28奥村祐哉選手、2Qで#22鈴木潤一選手、3Qで#9守田樹選手が先制するなど攻撃的な試合展開で13点という大量得点を叩き出しました。

GRIZZLIESも主将#11金谷洸希選手、#10小松勇斗選手、#21後藤功輝選手、#91乘田英樹選手といった日本代表を経験している選手がFALCONSゴールを狙い、果敢にシュートを放ちました。それらを止め、得点させなかったのがFALCONSゴーリー#15徳舛宗哉選手と#30伊藤駿選手です。お二人のうち、後半からFALCONSゴールを守った#30伊藤選手にお話を聞きました。

交代することは知っていた

前半にゴールを守ったFALCONS#15徳舛宗哉選手も調子がよく1Q、2Qとも失点は1点ずつに抑えています。なぜ交代することになったのでしょうか。

「FALCONSが目指すものが、日本一はもちろん、その先の世界に通用する選手というところがあるので、#15徳舛選手だけじゃなく僕も試合に出場し、日本一になり、世界に通用する選手として活躍できるようにということを、平田基樹ヘッドコーチから伝えられ、試合に出る機会をいただきました」

途中出場は予め知らされていたということなんですね。

「はい、前日の晩に知らされました。社会人3年目というなかで、これまで緊張が先行した試合が多いんですけど、自分たちが入団した2023年からFALCONSが優勝できてなかったので、必ず優勝したいと思っていました。また、今シーズン、若手を中心にキャプテンズを任せてもらっていて、僕もその一人だったので、これで優勝できたら大きな成長につながるなと、キャプテンとしての意気込みもすごくありました。ここ数年、GRIZZLIESに負けたときの試合は、ゴーリーが止めるべきところで止められなかったことが原因の一つとしてあるので、そこをしっかり止めて試合の勝ちに貢献出来たらいいなと思っていました」。

試合前日に2年間の試合を全部見返した

勝ちに貢献、ということですが、結果がきちんと出ている試合でした。どうしてそんなに止めることができたのでしょうか。

「ここ2年間、負けたときの自分の原因というのが、試合が終わってすぐに分かるようなものだったんです。それで同じミスをして負けると同じ後悔をするので、(全クラ決勝戦)前日に過去2年間の試合を全部見返しました。自分がどういうところに気を付けながら試合に入ればいいのか整理してから臨んだので、それが生きたんだと思います」

GRIZZLIESのシュートコースを読んで止めたのでしょうか。

「シュートコースは読まないです。過去2年間、自分が読んだところと外れて失点するシーンが多かったので、読まずに我慢をして最後までボールを見ることを意識しました」

4Q最後、GRIZZLIESの攻撃が続いたときは何を意識していましたか。

「試合中盤からGRIZZLIESがダブルチームを組んでボール落としにきたので、ディフェンスの時間前半と比べて増えるのかなと思っていました。ディフェンス全体で集中力を切らさないようにしていたので、オフェンス中も次のリスク考えて構えられたかなと思います」。

「アジア・パシフィック選手権大会 2026」で優勝して帰る

全クラ決勝戦が終わり、A1まで1ヶ月以上あるなかで何を意識して過ごしていかれるのでしょうか。

「(A1の前に)『アジア・パシフィック選手権大会 2026(※)』へ日本代表として出場します。(2027年男子世界大会の)大陸予選であるこの大会で、しっかり優勝して帰ってきたい。成長した状態で、僕個人としてはまだ取ったことない日本一を取って今シーズンを締めくくりたいと思っています。来年、再来年と世界大会が始まるので、先を見据えつつがんばりたいです」

※2026 Asia-Pacific Men’s Lacrosse Championship-World Qualifier (アジア・パシフィック選手権大会 2026)
2026年1月6日(火)~1月11日(日) ニュージーランド・ウェリントンにて開催

個人的にはとにかく勝ちたかった

 

FALCONS主将#99梅原寛樹選手

ここからは、FALCONS主将#99梅原寛樹選手に全クラ決勝戦を振り返ってもらいます。

「仕上がりは、かなりよかったと思っています。自分たちがやってきたことをちゃんと出せれば、勝てるんだなという手ごたえがありました。みんなもそれは感じているんじゃないかと思います。個人的には、とにかく勝ちたかった。そのためにも2023年と2024年の負けを気にし過ぎずに思い切りぶつかること、この一試合に集中することを意識しました」

梅原さんが2021年に主将になってから5年の間に2度逃した全クラ優勝。つい頭をかすめそうになりますが、試合中、思い出さずに済んだのでしょうか。

「決勝戦は、序盤から試合の流れに余裕があったので、考えずに楽しめました」

FALCONSが思う「日本ラクロス」とは

「FALCONSはこれまで日本代表になることも、日本代表がしていることをチームに取り入れることも、『日本一』になるためでした。日本一を目指す他のチームと同じことをして勝てなかったのがこの2年です。今年ヘッドコーチに就いてくださった平田基樹さんが『FALCONSは創部時、世界に向けて自分たちがどれだけ戦えるのか、どれだけ世界大会で活躍できるのか、どれだけ世界に通用する人間になれるのかを追い求めていた』と教えてくださいました。そこで、チームの大きなヴィジョンとして『世界に通用する人間になる』というのがあるので、今年は個人のレベルアップに注力してきました。目指すところが『日本一』というのは変わらないんですが、『世界』というところへ目線が上がったというのが、今年勝てた要因だと思っています」(FALCONS主将#99梅原選手)

全クラ決勝戦で何度も会場を沸かせた得点やセーブシーンは、FALCONS選手一人ひとりが「世界に通用する人間」を目指した賜物です。歓声は新しい「日本ラクロス」を見た喜びでもありました。

世界を知った選手たちが戻って来る A1

A1に出場するFALCONSにも早稲田大学にも「アジア・パシフィック選手権大会 2026」に出場する日本代表選手がいます。世界で戦った選手たちがチーム戻りA1で日本一を目指します。世界での経験をチームにどうつなげ、更には「日本ラクロス」をどう変えるのか。日本一だけじゃない、日本ラクロスが変わっていく瞬間を国立競技場で一緒に見てみませんか。会場へ足を運べない皆様にはライブ配信もありますので、そちらをご覧ください。

【A1 試合情報】

日時:2026年2月1日(日) 15:40フェイスオフ

場所:国立競技場(東京都新宿区)

対戦カード: KAWASAKI FALCONS 対 早稲田大学

チケット情報はこちら (チケットぴあ)

Photo by 日本ラクロス協会広報部 海藤秀満・小保方智行

Text by 日本ラクロス協会広報部 岡村由紀子

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