Reportレポート

【大学選手権大会決勝戦レポート】女子は歴史的逆転劇、男子も後半勝負・接戦を演じる

女子は歴史的逆転劇、男子も後半勝負・接戦を演じる

女子

⚫️(関東学生1位) 日本体育大学 9{2-0,4-0,3-3,0-6,サドンビクトリー0-1}10(関西学生1位)関西学院大学 ⚪️

MVP 関西学院大学#98MF 堀之内冴

優秀選手 日本体育大学#10AT 川内ほのか

1Q 2Q 3Q 4Q オーバータイム(延長戦) 合計
日本体育大学
関西学院大学 10
Q 時間 日本体育大学 関西学院大学
1 3’00 #10 川内ほのか
1 14’00 #10 川内ほのか
2 4’00 #26 人見リカ
2 6’00 #40 岡田怜奈
2 10’30 #65 小林和可
2 13’30 #54 呉屋花音
3 0’15 #40 岡田怜奈
3 3’00 #17 吉川ニコ
3 7’00 #98 堀之内冴
3 7’40 #10 川内ほのか
3 11’30 #51 岡澤美侑 #80井手歩未
4 3’30 #80 井手歩未
4 5’40 #17 吉川ニコ
4 9’10 #80 井手歩未
4 11’30 #80 井手歩未
4 12’40 #80 井手歩未
4 13’30 #0 大井里桜
OT 1’00 #98 堀之内冴

男子

⚫️(東海学生1位) 名古屋大学 5{1-2,2-1,1-2,1-2}7(関東学生2位)早稲田大学 ⚪️

MVP 早稲田大学#7AT 小川隼人

優秀選手 名古屋大学#7AT 前田賢蔵

1Q 2Q 3Q 4Q 合計
名古屋大学
早稲田大学
Q 時間 名古屋大学 早稲田大学
1 11’00 #35 小嵐駿亮
1 12’05 #11 吉田宗一郎
1 12’55 #14 富田隼平
2 6’00 #7 前田賢蔵
2 8’00 #7 小川隼人
2 14’10 #7 前田賢蔵
3 00’10 #12 室拓磨
3 3’00 #22 花井コルトンヘイズ
3 9’30 #0 山田伊織
4 4’30 #22 花井コルトンヘイズ
4 11’30 #24 三戸優也
4 13’00 #1 田口光成

戦評

女子

最後にドラマが待っていた。最後の1秒まで見逃せない、息を呑む大接戦を演じた両者。4Qで決着がつかず、2分間を最大4回、先に得点を取ったチームが勝利するサドンビクトリー(延長戦)に突入した。開始のドローを獲得した関西学院大学がボールを保持しそのままゴールを挙げ、9-10で試合終了。6大会ぶり4回目の女王に返り咲いた。

男子

がっぷり四つに組み合う、そんな試合展開だった。「功より強たれ」を部訓に掲げる早稲田大学は足元が不安定なグラウンド状態の中でも激しいコンタクト戦を仕掛ける。対する名古屋大学もこれまでの勝ち上がりを自信に換えた。不慣れなグラウンドコンディションの中、両者ともに負傷者が出る激しい試合展開を繰り広げたが、着実に得点を積み重ねた早稲田大学が、5-7で勝利。一進一退の攻防は、最後に早稲田大学へ軍配が上がった。

試合前

今年度の学生日本一が決まる。女子は関東1位の日本体育大学VS関西1位の関西学院大学。日本体育大学は、圧倒的な攻撃力で準決勝戦を圧倒。#5隅田かのか主将は今年度の日本体育大学を、「ひとりひとりが持っている高い個人技術を、パワフルにぶつけていくラクロスです。目の前の相手との1対1の勝負にこだわり続ける。その1対1の積み重ねが、結果としてチームの強さになる」と語る。対する関西学院大学は、ドローのゲット率で準決勝戦は優位に立ちリードを守った。日本体育大学に対し、「日体はドローのゲット率が高く、ジドリ(自分で上げて取る)が多いからだと思いました。なので、ジドリだけはさせたくないです。グランドボールの寄りも日体のほうが早かったので、関学は負けないようにより早く対応していきたい」と、ドロー戦で先行できるか。

男子は関東2位の早稲田大学VS東海1位の名古屋大学。関東2位の早稲田大学は、全学優勝5回の強豪(試合開始前時点)。#9野澤想大主将は今年度のチームを「フルフィールドオフェンスで、全員が点を取りに行くっていうのは、今年のチームの強みなのでそれは体現したい」と話す。その強みを決勝戦でも見せつけることができるか。一方東海一位の名古屋大学は初の東海地区勢として決勝戦進出。準決勝戦では、4Qで最大4点差を逆転されるも残り絶体絶命のピンチで追いつく。サドンビクトリーでは主将の#7前田賢蔵主将が劇的ゴール。準決勝戦と同様の戦いである「追いかける展開になっても、すぐに追いつける粘り強さ」を大一番でも披露できるか。

女子:1Q,2Q

試合開始から圧倒的な攻撃力を先に見せたのは日本体育大学。1Q3分、関西学院大学陣内でのファールを獲得した日本体育大学が、#10AT川内ほのかのゴールから日本体育大学のオフェンスが大爆発。砂川裕二郎ヘッドコーチ(以下HC)は 「自分たち自身も今まで練習してきたことを出せましたし、関西学院大学さんも最後まで自分たちのプレーを出し切ったと思うので、本当に今シーズンのベストゲームだと思っています」と言うとおり、敵陣内での組織的かつ安定したパス回しからシュートにつながるチーム力、#14G(ゴーリー)日下部梨花の決定機の場面でのシュートストップが光り、関西学院大学を寄せ付けない。特に攻撃では優秀選手に選ばれた#10AT川内は、この試合3得点。2Q終了時で6-0と、流れは完全に日本体育大学へと傾いたかと誰もが感じていた。

女子:3Q,4Q

転じて関西学院大学が猛攻を仕掛ける。3Qは互いに痛み分け3-3。最終4Qは、突き放したい日本体育大学を前に、前半の得点差をもろともしない攻撃力が光り、徐々に日本体育大学を追い詰めていく。このまま試合終了かと思われた4Q残り1分30秒、関西学院大学#0MF大井里桜がドロー戦で勝利し、#17AT吉川ニコ、#34AT濱田亜音と渡り、#0MF大井が土壇場でゴール。そのまま、サドンビクトリーへ突入した。日本体育大学の砂川HCは「(タイムアウトなどで)流れを変えたかったのですが、やはりグラウンドボールを取れなかった。また、ミスが起きてしまったので、その部分で関西学院大学の方が上だったかなと思います」と、これまで組織的な試合展開を見せていた日本体育大学のスキを関西学院大学がつけ込んだ。最大7点差から追いついた要因として「毎試合1点というところに大きく感情を左右されないところをずっと心がけていました。今、集中すべきところを全員でずっと言い聞かせてきたので。そこまで点数には目を向けずに、今の1球をずっと大事にしようということをみんなで雰囲気を作っていました」(#71 DF藤野夏帆主将)と振り返った。

両者一歩も譲れない延長戦(サドンビクトリー方式)は、関西学院大学が流れを作った。ドローは関西学院大学#0MF大井が勝利。関西学院大学がファールを得てから、最後は#98MF堀之内冴へとパスが渡り、シュートはゴールへ吸い込まれた。「今年のチームはあまりビハインドから始まる試合がなかったのですが、最後は私たちが勝つ気持ちでやっていました」(#98MF堀之内)と、気持ちでも日本体育大学を追い詰めた結果となった。

サドンビクトリーでは、4Q終了寸前までリードを保っていた日体大は巻き返す力は残されていなかった。前半の大量リードかつ無失点からまさかの逆転負けを喫した日体大の選手たちは、試合終了のゴールを喫した瞬間その場から倒れ込む選手も。大粒の悔し涙を流し、仲間に支えられながらグラウンドを後にした。砂川HCは卒業を迎える4年生に向けて、「この4年間やってきたことは無駄ではない、人生の糧になる。最後は負けてしまったが、しっかり胸を張って自分たちがやったぞと自分自身を褒めて欲しいです。ラクロスはこれで終わりですが、繋がりは続いていくので、仲間たちを大切にして、ラクロスをやって良かったと人生振り返って思ってくれるといいと思います」と、勝敗を超えたラクロスを通じた仲間とのこれまでのプロセスと、これからの活躍に対し、エールを送った。

男子:1Q,2Q

先に仕掛けたのは名古屋大学だった1Q4分、早稲田大学陣内で#10MF森本悠暉、#7AT前田賢蔵、#1MF田口光成と繋いで#35AT小嵐駿亮のゴールで先制。対する早稲田大学も負けてはいない。ゴール前、名古屋大学のファールから早稲田大学のフリースローで始まり、#11AT吉田宗一郎のゴールで同点に追いつき、流れを渡さない。続く12分55秒、FOを獲得した早稲田大学の#14FO富田隼平がそのまま、ブロークンシチュエーションとなっていた名古屋大学陣内へ切り込みシュートが枠内へゴール。1-2と早稲田大学がリードし、2Qへ。食らいつきたい名古屋大学は開始6分。中央から右サイドへの展開など静と動のコンビネーションを披露し、#7AT前田賢蔵の連続ゴールで3-3で後半戦に臨む。早稲田大学#7野澤想大主将は名古屋大学に対し、「もちろん準決勝戦の明治学院大学戦の試合内容も見ていたのですが、すごく勝ち越されても追いついてと泥臭いチームでしたし、勢いはもちろんあったので、怖さはありました」。名古屋大学もどちらに転ぶかわからないニュートラルなボールであるグラウンドボールに対する執着心やライン際での自然発生的にプレーしたヘッドスライディング、攻守のコンタクトでは早稲田大学に対しフィジカル面でも勝負を挑んだ。どちらに転ぶかわからない展開のまま後半へ進む。

男子:3Q,4Q

後半に入り突き放したい両者。口火を切ったのは、名古屋大学だった。3Q開始早々10秒、FOを獲得した#12MF室拓磨が同じくアンストラクチャーとなっていた早稲田大学陣内へ切り込みシュートがゴールポストへ。4-3とリードを奪う。巻き返す早稲田大学は、3分。#7AT小川隼人のゴール裏からの右サイドから攻撃を仕掛け最後は#22AT花井コルトンヘイズのゴールで4-4の同点。9分30秒では#7DF野澤、#22AT花井と渡り、最後は#0MF山田伊織のゴールで4-5。その後も互いに得点を重ねるが、早稲田大学がリードを守り続け勝利した。

この日MVPの#7 AT小川は「名古屋大学さんは我々が関東の決勝で敗れた明治学院大学さんにオーバータイムで勝っているので、油断したら足元をすくわれると思っていて。とにかく、今までずっとやってきたことはいつも通りやろうとやってきました」。さらに仕掛ける早稲田大学は、G(ゴーリー)が自ら名古屋大学陣へ駆け込み、シュートを放る。惜しくも外れるも、名古屋大学のスキを見逃さない攻撃が見られた。最後は5-7で早稲田大学が6回目の優勝。「今年の早稲田としてはフルフィールドオフェンスに力を入れてきて。どんな相手でも、とにかく攻め続けて10点取るオフェンスを目指してきました。それを最後まで体現できた、姿勢を見せることができて、この全国の決勝という舞台で、我々のラクロスを見せることができて良かったです」(#7AT小川)と、最後まで攻撃の手を緩めることなく攻め続けた早稲田大学が名古屋大学を僅差で上回った。#7DF野澤主将は「早稲田ラクロスは「功より強たれ」という部訓があるのですが、ニュートラルな部分である、グラウンドボールやコンタクトする部分は、上手い下手に関わらずできることなので。誰でもできることを誰よりも強く徹底するということが部訓だと思っているので、そこが、名古屋大学さんもすごく強度が高かったので、圧倒できたわけではないですが、しっかりやり切れる部分は出せたと思います」と、あくまでもこれまでの1年間の積み上げを自信に繋げたことが勝利への要因となった。

講評

ラクロスは最後まで何があるかわからない、そして、想いのこもった選手への応援の力が選手を後押しし、本来のパフォーマンスを引き出せることを証明させられたような試合だった。「名古屋大学もすごくいいチームで観客も盛り上がっていて、その前の女子も関西学院大学が優勝していたので、雰囲気は異様なものがあったと思った」(早稲田大学#7DF野澤主将)。試合の流れを読む、進め方を考えながらプレーをする。どんなに平静を保とうとしても、試合には流れがあるということ。得点には見えない「流れ」がラクロスの難しさと見応えが詰まった2試合だった。

次戦は真の日本一が決まる”A1″全日本ラクロス選手権。「絶対に圧勝して、支えてくださる全ての方々に恩返しがしたいと思っているので、まだまだ一球にこだわり続けたいです」(関西学院大学#71DF藤野主将)。男子はKAWASAKI FALCONS、女子はMISTRALが待ち受ける。どちらも関東2位がクラブ選手権を制しており、クラブ日本一までの道のりは決して平坦ではなかった。その分、チームの成長度合いはクラブ王者も負けてはいない。いや、勢いに乗る学生を前にして負けるわけにはいかない。

来年初頭にはアジアパシフィック選手権、そしてその後は世界選手権、120年ぶりの採用となったオリンピック(6人制)とビックタイトルマッチが控える。個人技術の高いレベルでの激突に観客を湧かすことが期待される一方で、チームのプライドがぶつかり合う。初の国立競技場での開催でたくさんの観客のなか、世界レベルでの対戦を期待したい。

Photo by 日本ラクロス協会広報部

Text by ラクロスマガジンジャパン編集部 高橋昇吾

この記事が気に入ったら "" をチェックしてね♪

いいね!
読み込み中...

Related Article関連記事

Latest Article最新記事 一覧へ

Feature 特集一覧へ