Newsニュース
―― 構造の強さと終盤力が真の“勝ち方”を明らかにする
2025年のNCAA男子D1ラクロス決勝トーナメント。1stラウンドから、まさに“May Madness”の名にふさわしい試合が連発した。番狂わせあり、土壇場の逆転あり。だが、そのすべてを貫いていたのは、勝者に共通する「組織の完成度」と「終盤での修羅場力」だった。この記事では全試合のレビューと、戦術面から読み解くクォーターファイナルの展望を深堀りする。
Pick Up Match①:Syracuse 13–12 Harvard(OT)
Harvardは“Domeで勝つには4回勝たねばならない”というジンクスを体現するかのような激戦を展開。前半で8-2とリードしながら、第4Qに突如流れが反転。
Syracuseはわずか1分39秒で5連続得点を叩き出し、流れを奪取。さらにFO勝率85.7%(Mullen 24/28)と4本のEMO得点で試合を支配し、延長ではHiltzがそれまで0/9だった状況から劇的な決勝点を決めた。
Harvardのオフェンス効率(41.4%)は高水準だったが、NCAA特有の終盤戦で勝ち切る経験値の差が浮き彫りとなった一戦だった。
Pick Up Match②:Georgetown 16–12 Duke
この試合も見逃せない。“アンダードッグ”という呪縛を解き放ったGeorgetownは、Aidan Carrollが6連続得点+2Aの離れ業で試合を決定づけた。
FOではRoss Princeが19/28を制圧し、特に第3Qの6/7というMake-it-Take-it展開が試合を完全に傾けた要因となった。BaymanとBanksの中堅コンビも躍動。DukeのJohn Danowski監督は「準備不足だった」と試合後に敗戦を認め、Georgetownの勝利を称えた。
“戦術の浸透”と“個の覚醒”がかみ合った、今大会屈指のアップセットと言える。
その他の試合結果レビュー
試合カード | スコア | 注目ポイント |
---|---|---|
Cornell vs UAlbany | 15–6 | Kirstが6G。前半抑えられるも後半に爆発。Long & Kelleherも好連携。 |
Notre Dame vs Ohio State | 15–6 | 新守護神Riciardelliが71.4%のセーブ。LynchがFO支配(17/23)。 |
Maryland vs Air Force | 13–5 | Spanosが6G。前半終盤の3連続得点→後半無失点。 |
Princeton vs Towson | 22–12 | Tucker Wade(5G2A)+Mackesy & Kabiriで“17/20ショット成功”。 |
Richmond vs North Carolina | 13–10 | Littlejohnの4G、Merklingerのロングボムで歴史的初勝利。 |
Penn State vs Colgate | 13–11 | 43TOの混戦を制す。Matthewsがクラッチ4Gで決勝点。 |
クォーターファイナル展望(5/18–19開催)
日時 | 対戦カード | 見どころ |
---|---|---|
5/18(土) | Princeton vs Syracuse | 組織完成度 vs Dome魔力。FOの支配力とミッドフィールド陣が鍵。 |
5/18(土) | Cornell vs Richmond | Kirstの爆発力 vs 粘りのリッチモンド。3月の再戦。Adlerの統率力にも注目。 |
5/19(日) | Notre Dame vs Penn State | Riciardelliの安定感とLynchのFOが再現できるか。GillsとのFO戦は要注目。 |
5/19(日) | Maryland vs Georgetown | Carrollの個人技 vs MarylandのチームDF。Spanosの中距離砲にも期待。 |
総評:勝利に必要な「構造」と「冷静さ」
1stラウンドで明らかになったのは、「強い」だけでは勝てないということ。
勝者には共通して、以下のような特徴が見られた:
- フェイスオフの支配力(Mullen, Prince, Lynch)
- 高効率のEMOとその設計
- 終盤のゲームマネジメントと心理耐性
- 個の爆発を支えるチーム構造
いよいよ準々決勝。ここからは“全米最強”を名乗るにふさわしい、真の勝者の条件が問われるラウンドとなる。
text by ラクロスマガジンジャパン編集部
picture – by Author Name, licensed under CC BY-SA 4.0